ユナイテッドアローズ「フィータ」にみる今の時代のラグジュアリー
「手のかかる、まるで生き物のような服作り」
神出デザイナーは洋服作りを「手のかかる、まるで生き物のようなモノ作り」と表現します。そしてそれが「すごく愛おしい」と。
神出デザイナーはユナイテッドアローズの共同創業者の1人、栗野宏文上級顧問の影響も大きかったと言います。「Aしか知らずにデザインするのと、AからCまで知っているなかでAを選択するのでは、結果として似たようなモノであっても、クオリティーや物の深度が全然違うということ。服作りを学ぶには現場に行って、生地や手法を間近で見て知識を蓄えるしかない」。栗野上級顧問のそうした教えも後押しし、今の「フィータ」の価値観が出来上がりました。
ラグジュアリーが特権性を表す記号的役割なのだとすれば、「フィータ」を着る人の特権性は、服の深度を感じられる部分にあるのだと思います。手織りでしか生み出せない生地の柔らかさ、タックの1mmの重なりに美を感じ取れる感覚は、すごくラグジュアリーだと感じます。
今後のビジョンを聞くと、「職人たちに継続的に仕事を出し続けることがまず目標。そして「フィータ」の価値観を共有するコミュニティーを生んでいきたい。少しずつ、作り手と歩調を合わせながら成長したいですね」と優しく笑います。