「サステナビリティーありきのビジネスであれ」--富士通の明言を機にもの申す
サステナビリティーをビジネスにして社会課題解決へ 企業にとってビジネスとサステナビリティーのどちらが先にありきなのかについて、富士通のサステナビリティーの責任者としてサステナビリティーが先にありきだと明言した山西氏の発言は、大変意味のあることであり、富士通がサステナビリティーの取り組みにおける先駆者であることを物語っているといえよう。 さらに、富士通はサステナビリティーを前提としたビジネスとして、同社が現在、最も注力しているデジタルトランスフォーメーション(DX)支援ソリューション「Fujitsu Uvance」(以下、Uvance)を展開している。このUvanceがミッションとして掲げているのが、「サステナビリティートランスフォーメーション(SX)」である。同社 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の時田隆仁氏はこの点について、これまでの記者会見や自社イベントのスピーチで次のように語っている。 「当社はパーパスのもと、サステナブルな世界の実現に向けて主体的に貢献していくために動き出している。今、私たち企業に求められているのは、自社の活動そのものを、環境、社会、経済により良いインパクトを与えるものへ変革していくこと。つまり、ビジネスを通じてのSXの実現だ」 その上で同氏は、「その実現においては、デジタルイノベーションが大きな役割を果たす」と述べ、Uvanceについては以下のように説明している。 「Uvanceは2030年の社会の在るべき姿を起点に、その実現に向けて起こり得る社会課題を皆さまと共にクロスインダストリーで解決していくための取り組みだ。誰もが夢に向かって前進できるサステナブルな世界をつくるというビジョンのもと、社会課題を解決する4分野のインダストリー、それを支える3分野のテクノロジー基盤、合わせて7つの分野で構成されている。Uvanceを通じて、業種の垣根を超えて企業をつなぎ、それぞれの強みを大きな力に変え、地球や社会をより良いものにしていく。これが、当社が目指すSXだ」(図3) 時田氏はさらに、次のようにも話している。 「次世代を担う人たちは、生まれた時から社会課題に直面し、それを『自分事』として捉えている。次世代が力を発揮していく場は、社会課題の解決に取り組む企業にこそある。全ての企業が社会課題を解決する力を持っており、それらの企業が共感を持って力を合わせ、共に取り組むことが求められている。その姿勢が、企業の持続的な成長につながるものと確信している」 富士通のメッセージはまさしく、「デジタル技術を活用して、どの企業もサステナビリティーの取り組みをビジネスにして社会課題を解決していこう」というものである。 こうしたUvanceを巡る話はこれまでも新たな動きがある度に本連載で取り上げてきたが、サステナビリティーに取り組む企業の姿勢として非常に共感するところがあるので、あらためて紹介しておきたい。 最後に、ビジネスとサステナビリティーの関係についてあらためて訴求しておきたい。 ビジネスとサステナビリティーは相反する関係にある。が、これからのビジネスはサステナブルな社会を創っていくための活動であるべきだ。すなわち、サステナビリティーが第一命題で、ビジネスはそれを進めるための手段であるということだ。 とはいえ、そうすると、企業にとっては自らの成長に相反する動きも起こり得るだろう。それをどうマネジメントし、自らのビジネスをサステナビリティーの実現に向けて継続させていくかが、これから個々の企業に課せられた使命であり、責任だと考える。 加えて、今あらためてサステナビリティーを強調するのは、デジタル社会の進展でエネルギー問題の深刻化が予想されるとともに、不安定な国際情勢によって地球環境問題への取り組みが鈍化する可能性が高いからだ。 近い将来、ビジネスとサステナビリティーの関係について悠長に論議している場合ではなくなるのではないか。来る2025年は、そんな強い危機感を持って臨むべきである。