「サステナビリティーありきのビジネスであれ」--富士通の明言を機にもの申す
企業にとって、自らの生業であり成長を目指し続ける「ビジネス」と、環境保全をはじめ社会の持続性を追求する「サステナビリティー」は、どちらが「先にありき」なのか。この問題については本連載でも幾度か取り上げてきたが、富士通のサステナビリティー責任者から見解を聞くことができたので、あらためて考察したい。 ビジネスとサステナビリティーはどちらが先にありきか 「サステナビリティーが先にありきだ」 富士通 執行役員 EVPで「Chief Sustainability & Supply Chain Officer」(以下、CSSO)を務める山西高志氏は、同社が先頃開いたメディアおよびアナリスト向けのサステナビリティー説明会の質疑応答で、「企業にとってビジネスとサステナビリティーはどちらが先にありきだと考えているか」と聞いた筆者の質問にこう答えた(写真1)。 筆者も全く同感だ。このことを訴求するため、本連載でもこの問題を幾度か取り上げてきたが、山西氏の発言を機に2024年最後の本連載であらためて考察したい。 なぜ、山西氏に上記のような質問をしたかといえば、2024年4月にCSSOに就任した同氏が、富士通で初となるサステナビリティーの責任者だからだ。CSSOも新たに設けられた役職だ。 同氏はCSSOについて、「文字通り、サステナビリティーとサプライチェーンを担う役職だ。この両方を担うことになったのは、サステナビリティーを実現する上でサプライチェーンが最大の課題となりつつある一方、サプライチェーンから見てもサステナビリティーの重要性が高まりつつあるからだ。さらに、サプライチェーンは実事業そのものであることから、実事業を見ている人間がサステナビリティーをリードすることで、これまで当社として掲げてきたサステナビリティーの理念を実行に移すことができると考えたからだ」と説明した(図1)。 さらに、同氏は富士通が2020年に定めた「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパス(存在意義)を実現するため、2023年にマテリアリティー(重要課題)を改定し、必要不可欠な貢献分野として「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイング(心身の健康や幸福)の向上」の3つを挙げた。この3つは、すなわちサステナブルな社会を実現する上での課題ともいえる(図2)。 そんな山西氏に質疑応答で、「企業においてのビジネスとサステナビリティーの関係をどう考えているか」を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。 「企業がサステナビリティーに取り組んでいくためには、ビジネスを成長させて利益をしっかりと得る形でその取り組みを持続させていかなければならないというのが、私の考えだ」 もっともな回答だが、この内容ではビジネスとサステナビリティーのどちらが先にありきなのか、分かりづらい。そこで、もう一歩踏み込んで聞いた答えが冒頭で紹介した「サステナビリティーが先にありき」という発言である。