大阪・泉大津の新名物『アンデクルンデ』 誕生 地元伝統と塩味のこだわりが光る和菓子 パリオリンピック・女子ホッケーの健闘を祈願し奉納も
「地元の名物をつくろう!」という想いから生まれた和菓子「アンデクルンデ」。 大阪府泉大津市で活動する泉大津青年会議所と老舗和菓子店「ぽんぽんや」が協力してつくりあげた。ネーミングから察する通り、餡子を味わうお菓子だ。開発のきっかけと、女子ホッケー「さくらジャパン」の健闘を祈念して奈良・東大寺の大仏に奉納した経緯について話を聞いた。 【写真】さくらジャパン・浦田選手のステッカーを貼って応援していました
大豆餡の伝統菓子「くるみ餅」をアレンジ
大豆餡にくるまれた小餅を、食べる直前に最中(もなか)の皮に挟んで、オーストラリア産の天日塩を適量ふりかける。大豆餡の甘すぎない味わいを、塩がいっそう引き立てて、飽きの来ない上品な味になる。これが2023年6月から販売が始まった、泉大津市の名物お菓子「アンデクルンデ」だ。 泉大津市は大阪府の南部、泉州と呼ばれる地域にある都市。明治以降は繊維産業が盛んになり、名産品として毛布が有名である。だが、来客や訪問時のお土産に、毛布は適さない。 「青年会議所ではずっと以前から、手軽に渡せて、受け取った方にも負担にならないものを創出したい想いがありました」 そう語るのは、公益社団法人泉大津青年会議所(以下、青年会議所)で理事長を務める前川和也氏。その想いを実現しようと、青年会議所の総務広報委員会を中心としたプロジェクトが始動した。 初めから和菓子にフォーカスしていたわけではなかった。地元の名物にふさわしいものを探しているとき、1933年創業の老舗和菓子店「ぽんぽんや」で製造販売されている「くるみ餅」に出会ったという。 「くるみ餅」は古くからこの地域に伝わる、大豆の餡子で小餅をくるんだ素朴なお菓子だ。大豆の餡子を小餅にくるんで食べるから「くるみ餅」と呼ばれる。 「くるみ餅は僕らが幼い頃からなじんでいたこともあって、全国にあるものと思っていたんです。ところが、地域がかなり限定されていることを初めて知りました。ぽんぽんやさんからも、泉州に昔からある名物だと教えていただきまして……」 「せっかく地元に伝統のお菓子があるのだから」と、それをアレンジした形で開発することになり、「新しい味」として塩味が企画された。これは、太平洋戦争中に塩不足を補うため、泉大津市と隣の忠岡町との境を流れる大津川の河口に製塩所がつくられた歴史に由来する。 さらに最中の皮で包む案も出て、青年会議所とぽんぽんやで共同開発が進められた。戦時中につくられた製塩所はもう存在しないため、大豆餡に合う塩探しに最も苦労したそうだ。塩は餡に炊き込むのではなく、食べる際に餡子の上からパラパラとふりかける。塩味を直接舌で感じるため、味はもちろん食感を左右する結晶の大きさにもこだわって探したという。 「アンデス産や宮古島産、メキシコ産など、いろいろな塩を試しました」 最終的にたどり着いたのが、まろやかな味でえぐみが少ないオーストラリア産の天日塩だった。また、最中の皮は、泉大津のだんじり正面についている飾り「鬼熊(おにくま)」を模したそうだ。こうして約半年の期間をかけて「アンデクルンデ」が完成。2023年6月から発売が開始され、地元の人たちがお土産用に10個20個とまとめ買いすることが多いという。