5500年前は会計ツール…世界最古の文字はこうして生まれた
「そうだ、文字を作ってみよう」って考えた人天才だなあ。 何世紀にもわたり、文字の起源は学者の間で大きな謎でした。しかし最近になり、イタリアの研究者チームが「最古のくさび形文字(一部)の原型は、先史時代の円筒印章のモチーフから直接進化した可能性がある」と発見しました。 考古学学術誌Antiquityに掲載された研究によると、古代メソポタミアでは貿易や商品の管理に印章が使われており、そこに刻まれた記号が、原くさび形文字へと進化していったといいます。 くさび形文字は5000年以上前にメソポタミアで出現し、世界最古の文字体系だとされています。今回の発見は、最古の文字がどこから来たのか、その発明に光を当てるだけでなく、まだ半分以上が謎に包まれている原くさび形文字の解読にも役立つ可能性があります。
古代メソポタミアが起源
くさび型文字は紀元前4000年ごろ、現在のイラク南部にあたる地域でシュメール人によって生み出された世界、いや宇宙最古の文字体系です。これは、専門家の間でも共通認識となっています。アッカド人やバビロニア人、アッシリア人、ヒッタイト人など、いわゆるメソポタミア文明を担ってきた人々は、少なくとも紀元前100年までくさび形文字を使用していました。 くさび形文字の元になったのは原くさび形文字という、シンプルな記号の絵文字で構成されたもので、徐々に音節要素が組み込まれていきました。原くさび形文字の存在を示す最古の証拠は、大きな影響力を持っていた古代シュメールの都市ウルクに見られ、紀元前3350年から3000年の間のものとされています。
もともとは会計ツール
研究者らは長年、原くさび形文字自体が古代の商売やそれに伴う会計から発展したのではないか、という仮説を立てていました。現在、イタリアの研究チームは「原くさび形文字のなかには、5000年から4000年前の円筒印章に見られるモチーフから直接転用された可能性がある」と示唆しています。 ちなみに、円筒印章とは、柔らかい粘土の上で押したり転がしたりすると長方形のデザインが残る、一種のスタンプのようなものです。 とりわけ円筒印章と原くさび形文字の粘土板は、古代の会計ツールとして使用されていました。円筒印章もメソポタミアで発明され、紀元前4000年代には、主に農業と繊維貿易を管理するために使われています。これは専門家の間で共通認識で、その証拠はイラク南部に限られています。 研究に参加したボローニャ大学の文献学者シルビア・フェラーラ氏は声明の中で次のように説明しています: 「古代の印章と西南アジアでの文字の発明には密接な関係があると長年認識されてきましたが、 特定の印章のイメージと記号の形状の関係はほとんど調査されていません。 印章のイメージは、この地域で初めて生まれた文字記号に大きく寄与したのでしょうか?」