BMIで健康度は測れない、むしろ害になることも、体重より気にすべきこととは
BMIの限界
BMIのみでの健康状態の評価には大きな問題がある。その人の体重のうち、脂肪、筋肉、骨がそれぞれどの程度の割合を占めているのか(体組成)は、BMIを見ても判断できないからだ。 デ・フィリピス氏は、筋肉質のアスリートは、体脂肪が少なくてもBMIが高いことが多いと言う。スタンフォード氏は、血圧やコレステロール値が高くてもBMIは「正常」である人もいると補足する。 2016年に医学誌「International Journal of Obesity」に発表された、4万人以上の米国人を対象とした研究では、参加者のBMIを、他の健康指標(インスリン抵抗性、炎症マーカー、血圧、コレステロール値、中性脂肪値、血糖値など)と比較した。その結果、BMI値から過体重と判定された人のほぼ半数、肥満と判定された人の約4人に1人は、それ以外の健康指標が正常だと判明した。 この論文の筆頭著者であるトミヤマ氏は、「BMIでは過体重になる米国人のうち3400万人は、それ以外の健康指標は完全に正常なのです」と言う。 ほかにも問題がある。体組成は人種や民族、年齢、性別によって違いがありうるにもかかわらず、BMIの計算では、半世紀前に白人男性のデータに基づいて開発された計算式が、すべての人に使われているのだ。それ以外の人々、特に黒人女性は、この基準では健康的でないと不当に判定されてしまうことがある。 そのため、多くの臨床医がBMIを健康の指標として使わなくなりつつある。スタンフォード氏も、クリニックで患者を診察する際にBMIについて患者に話したり、健康を改善する計画を立てる際にBMIを考慮したりすることはないと言う。
過食やストレスの原因となることも
BMI値の高い人に「過体重」や「肥満」のレッテルを貼ること自体が有害であることを示す証拠もある。トミヤマ氏の研究によると、体重を理由に肥満のレッテルを貼られると、コルチゾールというストレスホルモンの濃度が急上昇して食欲を促すという。「その結果、過食とストレスの『悪循環』が始まってしまうのです」 コルチゾールは、心血管疾患や高血圧性臓器障害など、ほとんど全身の臓器に悪影響を及ぼす可能性もある。さらにトミヤマ氏によると、過体重または肥満と判定された人の多くが、医師に症状を無視された経験があると報告しているという。