NGリスト問題を理由とする記者会見の失敗論について
本記事は、 西村あさひ が発行する『N&Aニューズレター(2024/8/28号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひまたは当事務所のクライアントの見解ではありません。
執筆者:木目田 裕 故ジャニー喜多川氏による性加害問題に関する旧ジャニーズ事務所の2回目の記者会見(2023年10月2日に行われたもの)に関し、NGリスト問題を理由にして記者会見の失敗と述べる見解(以下「本見解」と言います)が一部に散見されます。私は、この件で記者会見に登壇した一名ですので、当事者ですが、本稿では、危機管理の専門家の立場から、以下で述べるとおり、こうした失敗論の問題点について私見を述べます。 なお、本稿は私の個人的見解であり、旧ジャニーズ事務所の見解ではありません。
1. NGリスト問題をめぐる事実関係
NGリスト問題をめぐる事実関係については、旧ジャニーズ事務所が2023年10月10日に公表しているとおりです※1。本稿に必要な限度で、その概要をまとめると以下のとおりです。 ※1 旧ジャニーズ事務所(現スマイル・アップ社)による2023年10月10日付け「 NGリストの外部流出事案に関する事実調査について 」。なお、同社による2024年8月27日付け「 NGリストの外部流出事案に関する弊社委託先による調査結果の受領について 」も参照。 (1)NGリストは、旧ジャニーズ事務所の指示で作成されたものではなく、記者会見を受託していた危機管理広報業者(以下単に「ベンダー」と言うことがあります)の担当者が独断で、記者会見開始直前に会場で作成して、司会者やベンダーの業務委託先であったイベント運営会社の担当者等だけに共有したものであった。 (2)ベンダーの担当者としては、NGリストの作成理由について、司会に特定の記者を指名させないという意図ではなく、この日の会見のテーマに関係する質問から先に受け付ける趣旨で作成・共有したものであって、旧ジャニーズ事務所からの指示に反しているという意識がなく、「氏名NG」(ママ)という文言は安易に本来の意図とは異なって解されてしまう用語を用いたものであると説明している。 (3)実際の記者会見においては、録画結果からも明らかなとおり、司会者は、「氏名NG記者」とされている記者にも指名して発言させており、「氏名候補記者」及び「氏名NG記者」のいずれについても、約5割を指名した。不規則発言を伴う質問を含め、「氏名NG記者」からの質問数(合計8問)及び質疑のために対応した時間(合計14.5分)は、「氏名候補記者」とされている記者からの質問数(合計5問)及び質疑への対応時間(合計11.5分)を上回っていた。また、「氏名NG記者」のうち一名による質問に関しては、登壇者(旧ジャニーズ事務所社長と私です)の判断で、司会者に対して2問目の質問にも回答する旨を告げて、旧ジャニーズ事務所において指名して質問に回答している。