「自分の時間がなくなるのが耐えられない」子どもができても実家に入り浸る「子ども部屋夫」の身勝手さ
■親離れできず、結婚しても自立できない 昔はマザコン夫や嫁姑問題が大きく取り扱われていましたが、近年はそういった言葉は死語になりつつあります。大人になっても仲がいい親子が当たり前の存在になったためです。 結婚しても義実家とコミュニケーションを取れると、家族の孤立を防ぐことができる、子育てに協力してもらえるというメリットがあります。 その反面、A子さんの夫のように、無自覚に親離れできず、結婚しても自立できないというケースも存在するのです。 ■本人に「親離れできていない」自覚がない 自立には、経済的にも精神的にも苦労を伴います。 年齢的に、また社会的にも結婚をしなければならないと思って結婚はするものの、その後も、経済的にも精神的にも楽でいられる実家に軸足を置いたままで、「家族は実家の両親だけ。結婚相手は本当の家族ではない」と考える人がいるようです。 この事例では夫の側でしたが、「妻が結婚後も毎週末実家に帰るために、まともな夫婦生活が送れない」といった事例もよく見られます。 先ほども述べた通り、近年は親と仲がいいのは普通のことになっています。そのため、本人に「親離れができていない」という自覚がなく、話し合っても「親に助けてもらって何が悪いんだ」といった意見に終始してしまい、すり合わせが難しい場合が非常に多いです。 いつまでも両親の庇護のもと何不自由がなく生活できていると、自立するのは難しいことなのかもしれません。しかし、結婚生活というのは自立した家庭を築いていくことです。結婚してもまだ両親の子どもでいることと、夫や妻、そして子どもの親であることは両立できません。自分自身が子どもでいることの方が心地よいままだと、夫婦が不和になり、取り返しのつかないことになってしまいます。 結婚する場合は実家からは自立する、自立したくない場合は結婚しない。「結婚しなければいけない」という体面を先に考えるのではなく、自分は自立したいのか、それともしたくないのかを出発点にして考えてほしいと思います。 ---------- 堀井 亜生(ほりい・あおい) 弁護士 北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。 ----------
弁護士 堀井 亜生