証明できないことは、証明できるのか?「自己言及」という無限後退を退けた、天才・ゲーデルの発想「ゲーデル数」とはなにか!
「有限個の命題」と「無限にある素数」
ここにいたり、すでに何冊か不完全性定理の本を読んできた読者は、なぜ、入門書のゲーデル数の例が「0=0」のような簡単な事例に限られて紹介されていたのか、合点がいったことであろう。 そう、ここで考えた「3+5=8」という、きわめて簡単な算数の式ですら、こんなに長くなってしまうのだ。要点を説明するには、もっともっと簡単な数式で事足りる。竹内薫は、こんなに長い数式を書いてしまい、バカみたい。そーゆーことである。 で、この方法の素晴らしいところは、あらゆる命題だけでなく、「あらゆる証明も背番号で呼ぶことが可能になる」点。なぜなら、証明というのは、ぶっちゃけ、命題がずらずらと並んだもののことだから。 無論、命題が無限個あったら意味をなさない(つまり、証明が終わらない)から、証明は必ず有限個の命題の集まりである。ところが、素数は無限個あるので、ゲーデル数に置き換えると、すべての命題、つまり過去に証明されたすべての命題から、これから未来永劫にわたって証明されるであろうすべての命題も、それぞれ固有のゲーデル数で表現することが可能になるのである! しかも、すべての証明が素数の素数乗の積であらわしてあるので、同じゲーデル数をもつ証明は2つとなく、ゲーデル数から元の証明を復元できるのだ! よろしいでしょうか? とにかく、こうやって、命題も証明も、ゲーデル数の方法によって数字に変換してしまえば、算数に関する複雑な性質ですら、計算できてしまう……、もとい、証明できてしまうのではないか? そういう流れである。 以降の記事【天才・ゲーデルの考えた「ゲーデル数」はなぜ必要か?そこには「超数学」の視点が必要だった!】では、この「ゲーデル数」という発想から「超数学」という視点について考えていくことにします。
竹内 薫(サイエンス作家)
【関連記事】
- 【続きはこちら】天才・ゲーデルの考えた「ゲーデル数」はなぜ必要か?「超数学」とはなにかをあらためて考えてみると【不完全性定理とはなにか】
- 【ゲーデルの不完全性】真であるが証明できないことってなに?クレタ人の預言者は言いました「クレタ人はいつも嘘つきだ」【パラドックス】
- 【ゲーデルの発想】「1+1=2」の証明で使われる「ペアノの公理」ってなに?『プリンキピア・マテマティカ』に対してゲーデルが指摘した「不完全性」という着想
- 【問題】奇数の無限、偶数の無限、自然数の無限。一番大きいのはどれ?自然数の無限が、偶数・奇数の無限の2倍ではない、そのシンプルな理由
- 【無限とは何か】厳密な意味での「無限」の考えを数学に持ち込んだ天才・カントール。その天才の発想と非業の生涯とは