多肉植物の自生地の姿を再現して育てる「ハビタットスタイル」とは【趣味の園芸8月号こぼれ話・前編】
鉢植えの表土もひと工夫
編:ところで、『趣味の園芸』8月号の記事には、表土には珪砂(けいしゃ)、つまり石英の砂を使うと書かれていましたが、それも自生地を参考にしているのですね。 河:そうです。南アフリカの西部やマダガスカルの中央山地では主に石英の石や砂が大地を覆っています。ハビタットスタイルでも自生地の土壌を模して石英の石や砂をメインにした表土を使います。例えば、マダガスカルに自生するアロエ・カスティロニアエを植えた鉢はこんな感じです。 編:いいですね~。行ったことのない自生地が目の前にある感じです。このカスティロニアエも、いかにも自生地で育ちましたというふうな、がっしりと締まった顔つきをしていますね。 河:本来の姿に近いと思います。早く大きく育てることが悪いわけではないですが、私は荒々しい野生の雰囲気をもつ姿に惹かれます。じっと眺めていると、降り注ぐ太陽の光、乾いた砂っぽい風、その風に吹かれてカサコソと小さな音を立てる地表の様子まで、瞼に浮かぶようです。 編:拝見していると、最初のロフォフォラを除けば、表土というか地面の様子がどれも似たように見えますが、実際、現地はこんな感じなのでしょうか。
河:南アフリカの主要なところはこんな感じです。ただ、場所によっては細かい砂粒だけに覆われていたりもします。それを再現した例をご覧ください。南アフリカのナマクアランドからナミビアにかけての海岸沿いの砂地に自生するフェネストラリア・ロパロフィラ(群玉)を植えつけた鉢です。 編:まるで砂漠の只中のようですね。小さな窓の部分以外、ほとんど砂に埋まっていますが、大丈夫ですか? 河:群玉はいわゆる「窓植物」で、ハオルチアなどと同じです。ほかの多くの窓植物と同様に、自生地では植物の身体の大半は地中に埋まっていています。てっぺんの窓だけを地表に出して、そこから光を取り込む、この状態こそが自然の姿です。 編:ハオルチアの自生地の写真を見たことがありますが、確かに地面に埋まって、ほとんど地表面と同化しているような感じでした。 河:ハオルチアも、園芸では一般的に株元を表土の上に出して楽しみますが、野生の状態では窓の部分しか地表に出ていません。ところで多肉植物の自生地では、フェネストラリアの例のように均一な大きさの砂粒が広がっている場所というのは少なくて、様々な大きさの砂粒や、割れて細かくなった石が混じっている場所、岩場などがほとんどです。先ほどまでの作例はそういう現地の様子を再現したものです。