青山に潜む“築50年の秘密基地”今も衰えぬ人気、圧倒される中庭と内部、借り手の意外な“目的”
思わず足を止めて眺めてしまうような、街中にある少し変わった形をした物件ーー。 いったいなぜ、そのような形になったのか。そこには、どんなドラマがあり、どのような生活が営まれているのか。 連載「『フシギな物件』のぞいて見てもいいですか?」では、有識者や不動産関係者に話を聞き、“不思議な物件 ”をめぐるさまざまな事情に迫る。 【37枚の写真を見る】青山の集合住宅「ビラ・モデルナ」四角いハコに囲まれた、圧巻の中庭。コンパクトで、秘密基地のようなこだわりが詰まった部屋の内部 ■歴史ある建物が点在する街 ファッションブランドの旗艦店やインテリアショップ、カフェやヘアサロン、美術館などが集まる原宿や渋谷、表参道の一帯。歩いていると、著名な建築家による名建築にも遭遇する。
地下鉄・表参道駅を降り、地上に出て渋谷方面へ。人や車でにぎわう青山通り沿いを歩き、国連大学を過ぎたところで脇へ入った。喧騒から一転、そこは静かで落ち着きのある街に変わった。 しばらく歩いて通りから3ブロック目。目の前に白い大きな建物が現れた。 四角い箱が重なり、リズミカルに並ぶ。ギザギザの輪郭の美しさに、思わず見惚れてしまった。 【37枚の写真を見る】四角いハコに囲まれた中庭は、夜の景色も圧巻。コンパクトで、秘密基地のようなこだわりが詰まった部屋の内部も
建物の前にはタイル張りの広場があり、石のテーブルやチェア、ベンチが置かれ、中央に大きな木がそびえ立つ。 白い壁と空、樹木、小さな広場。いつかテレビで見た地中海の風景を思い出した。 建物の名は「ビラ・モデルナ」。1974年(昭和49年)に竣工した、地上10階地下2階、総戸数200戸近くの集合住宅で、今年50周年を迎えた。 ■ロビーはまるでホテルのよう 建物の入り口は、なんと回転式。丸いモチーフのモダンな扉だ。
回転扉をゆっくり押して建物の中へ。そこには、絵画が飾られ、ソファセットが置かれたロビーが広がる。ホテルのようなフロントと、レトロな化粧室、壁にはルームナンバーが掲げられている。 「昔は24時間体制でフロントに人が立ち、鍵や郵便物を預かったり、電話をつないだり、フロント業務を行っていました。ロビーの隣にイタリアンレストランが入っていた時代もあり、ルームサービスを行っていたと聞いています」 そう話すのは、建て主である興和商事の取締役の新槇照代さんだ。興和商事はこの建物の一角にオフィスを構え、一部住戸を保有する管理組合の理事長という側面も持つ。新槇さんは不動産事業部長として建物の維持・管理に携わっている。