「高級スマホ」期待から一転、需要肩すかしの余波、中華スマホの回復遠く期待はAIサーバー向け
ハイエンドなスマートフォンの新モデルが伸び悩んでいる。複数の電子部品メーカー関係者によると、アメリカの大手スマホメーカーは今春、サプライヤーに部品を前倒しで発注する動きを見せた。これを受けて業界内には、9月発売の新モデルの増産に備え、旧型品の在庫を先に確保するためではないか、との期待感が広がっていた。 【写真】村田製作所の電子部品は”全方位戦略” スマホのハイエンド機種の出荷台数が増えれば、高性能な積層セラミックコンデンサー(MLCC)などの搭載数が増え、電子部品メーカー各社は恩恵を享受できる。
ところが、ふたを開けてみると、新モデルの販売台数は事前の期待ほど伸びなかった。村田製作所のIR担当者は「高級スマホの台数見通しは期初から変更していない」と話す。近年、在庫調整が長引いていた中華スマホの高級機種についても、前2024年3月期後半の低迷から需要底打ちが期待されていた。が、急回復しないまま低調に推移した。 ■中国のスマホ向け部品が3割超減 MLCCはスマホやタブレット、自動車まで、幅広い電子機器に搭載される。村田製作所、TDK、太陽誘電の大手電子部品メーカー3社の明暗は、くっきりと分かれる結果となった。
太陽誘電は11月7日、今2025年3月期の業績下方修正を発表した。本業の儲けとなる営業利益は、期初予想200億円(前期比2.2倍)から一転、76億円(同16.3%減)に沈む見通しだ。主力製品の1つである複合デバイスは、売上高の約75%を中国のスマホ向けが占める。同部門の売上高は前期比34.2%減まで落ち込む見込みで、大幅な業績下振れの一因となった。 ハイエンド機種に代わり台数が増加しているのは、中華圏で生産されたローエンドモデルだ。アフリカやインド向けなどに輸出されているものとみられる。先端品向けのMLCCに注力する太陽誘電にメリットは少ない。
一方、同じくスマホ向けのMLCCに強みを持つ村田製作所は、今2025年3月期の営業利益3000億円(前期比39.2%)の予想を据え置いている。同社はハイエンド向けをもっとも得意とするものの、ローエンドからミドルエンドまでのボリュームゾーンでも、コスト競争力を武器に高シェアを誇る。高級機種ほどの収益性は望めないが、スマホ向けの出荷増がポジティブに作用するのは間違いない。 ■上方修正した要因は TDKは11月1日の決算説明会で、今2025年3月期のスマホ世界生産台数を11億4400万台から11億7500万台へ引き上げた。これを受けて今期営業利益についても、期初予想1800億円(前期比4.1%増)から2200億円(同27.2%増)へ上方修正した。