奇策?いや才能…超大型DFながらFW起用されアビスパ福岡の執念ドロー演出した20歳の三國ケネディエブスが面白い!
今シーズンの三國は京都サンガF.C.に0-2で屈した第4節でリザーブに名前を連ねただけで、残る6試合はベンチ入りメンバーにも選ばれなかった。それでも、今シーズンから指揮を執る長谷部監督は何かに導かれたかのように、最終ラインではなく最前線のポジションで三國をピッチへと送り出した。 「彼は練習からコーナーキックからの得点であるとか、ヘディングの強さというものを常に磨いています。なので、今日はそのよさを出すときだ、という判断で彼に託しました。ただ、頭のなかで(パワープレーの)プランを練っていたら(事前に)本人にも伝えますし、練習もする。自分はそういうタイプの指導者なので、どちらかと言えばインスピレーションに近いのかな、と」 直感的な閃きによる采配を決断させた理由は2つある。キックオフ前の時点で愛媛が喫していた11失点のうち、4つがコーナーキック絡みだった。セットプレーの守備につけ入る隙がある上に、青森山田高の2年生に進級した直後までは、三國はセンターフォワードとしてプレーしていたからだ。 ナイジェリア人の父と日本人の母の間で、東京都東村山市で生まれ育った三國はプロになる夢を抱いて青森山田中へ入学。3年次に出場した全国中学校サッカー大会では8ゴールをあげて得点王に輝き、チームを優勝へと導いた。しかし、高校に入ってからは伸び悩んでいると感じていた。 高校卒業後にプロ、という夢をかなえるためには、2年生からレギュラーを獲らなければ間に合わない。自問自答を繰り返した末に、長身が生きるポジションとしてセンターバックへの転向を自ら決断した。そして、意を決した三國の直訴を、青森山田高の黒田剛監督は笑顔で受け入れた。というよりも、30人近い教え子をプロへ送り出している名将もまた、三國のコンバートを考えていた。 「プロになるのならばおのずと、というか、いずれはセンターバックに、という思いがあったので。身長が190cmを超えるセンターバックは、日本代表でもいないですよね。足も速いし、能力的には最も日本代表に近いポテンシャルも秘めている。海外に行っても通用する、と思っているので」 ゴールを決めるためではなく、自分たちのゴールから可能な限りボールを遠ざけるために。武器であるヘディングを徹底的に磨きあげた三國は青森山田高の最終ラインに君臨し、高校日本一を手土産にプロの門を叩いた。当時もJ2で戦っていたアビスパを選んだのも明確な理由があったからだ。