米大統領選、ついにカウントダウン…やや優勢のトランプと支持者に「反トランプ」アーティストの歌声は届くのか?
音楽は分断を癒せるか
実際のところ、著名アーチストによる候補者推薦が選挙結果にどのような影響があるのかは、はっきりしない。ポップソングはむしろ、人々の間に漂っている時代の空気や意識が先にある時に、それを分かりやすいメッセージにして、カタリストとしての役割を果たすのだろう。 歌で支持を盛り上げようとしても、その空気がなければ無理がある。 最新の世論調査では、スイングステートでのトランプ候補優勢が伝えられるが、その差は僅差で激しい競り合いが続く。一方、大統領選挙の「賭け」の世界ではポリマーケットの予測市場(参考記事:米大統領選や『SHOGUN』エミー賞受賞まで賭けの対象に…拡大する「オンラインギャンブル」の危険な落とし穴)で、この一か月の間にハリス氏が失速し、10月28日現在、トランプ66%、ハリス34%と大きな差がついている。 今回の大統領選挙でハリス陣営は、ビヨンセのヒット曲「フリーダム」を、本人の使用許可を得てテーマソングに採用した。パワフルなメロディーと「自由、自由。どこにいるの?私を解放して」というリフレインは、人工中絶の選択権など、女性の権利を中心とするハリス候補のスローガンに合致する。 元気の出る、いい歌だ。でも、音楽が大きな政治的なうねりと一体化した過去の事例のように、そのメッセージに候補者の支持集会の外まで溢れ出す勢いがあるかというと、そうは見えない。 大統領選挙後に世論の分断が収まるとは到底見えない中で、アメリカ人はお互い違う音楽を聴き続けるのだろうか。それとも、音楽は分断を癒すことが出来るだろうか。
小出 フィッシャー 美奈(経済ジャーナリスト)