30年間も未公開だったゴッホ作品がオークションへ。人生の晩年に描いた「完全に自由な芸術」
香港のクリスティーズアジア太平洋地区新本社のオープンを記念して9月26日に開催される20世紀・21世紀美術イブニングセールに、フィンセント・ファン・ゴッホによる《Les canots amarrés》(1887)が出品されることがわかった。この作品は、ゴッホが2年間のフランス旅行中に、パリの北西、セーヌ川沿いにある風光明媚な保養地で、週末になると船遊びの人々で賑わうアスニエールで描いた3点の風景画の1点。この作品以外の2点、《 Ponts sur la Seine à Asnières》《Restaurant de la Sirène, Asnières》はそれぞれエミール・ビューレ・コレクションとアシュモレアン美術館が所有している。 クリスティーズによれば、《Les canots amarrés》はもともと、シチリアと南イタリアの名家であるシチリア=ブルボン家のコレクションだったが、その後1991年にイタリアの女優エディ・ヴェッセルがロンドンのサザビーズで購入した。ヴェッセルの娘のカミラ王女が、今回、信託を通じてクリスティーズに出品している。 《Les canots amarrés》の予想落札額は2億3000万香港ドルから3億8000万香港ドル(現在の為替で約42億円~約69億円)。落札結果が予想額の上限に届けば、アジアのオークションにおける西洋人アーティストの作品としては最高額となる。現在の最高額は2021年にクリスティーズで販売されたジャン=ミシェル・バスキアの《Warrior》(1982)で、3億2360万香港ドル(同・約59億円)だ。 出品作品について、クリスティーズアメリカズの20世紀・21世紀美術担当であるマックス・カーター副会長はリリースで次のように述べている。 「フィンセントはその短い生涯の最後の数年間で、狭く規定していた色彩、技法、主題から解き放たれ、完全に自由な芸術を達成しました。1887年、彼はアスニエールで、筆致を緩め、パレットを明るくし、夏の日の繊細なハーモニーを謳歌しながら、勝ち得た自由を心から謳歌していたのです」 同セールでは、クロード・モネの「睡蓮」シリーズの1点も出品される。オークションに先立ち、《Les canots amarrés》は9月22日から26日まで、クリスティーズの香港の新社屋で展示される予定だ。(翻訳:編集部)
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