「貯蓄より投資へ」はなぜ根付かないのか――。エコノミストが指摘する3つの理由
「株で1億円稼いでFIRE達成!」「年収300万円でも億り人に!」といった言葉をSNSで見かけるたび、本当にそんな夢みたいな話があるのだろうか?とやきもき。一方で投資で資産を失った人の失敗談を聞くと、怖くなり最初の一歩が踏み出せない。でも銀行にお金を預けておくだけじゃどうやらダメらしい…。結局どうすることもできないまま…。 政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の旗印。投資は資産形成の1つの有効な方法だ。だが、「投資=ギャンブル」のようなイメージがつきまとっている。「投資が怖い」と足踏みを続けているのはもったいない。エコノミストの永濱利廣氏に詳しく話を聞いてみよう。(ライター・中原美絵子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
インフレでモノの値段が上がるとお金の価値は下がるという現実
世界的なインフレの波が日本にも押し寄せ、物価上昇や値上げによる金銭的な不安を抱えている人は多い。賃金が上がらないなか、節約だけではまかないきれないと投資への意識は高まっているようだ。だが、いざ投資を始めようと思っても、何を買ったらいいのかわからない。株で損したらますます資産が減ってしまうと思うと、なかなか一歩が踏み出せない。結局、やっている資産形成は日本円での銀行預金だけ。これは「経済合理性から考えると非効率だ」と永濱氏は指摘する。モノの値段が上昇すれば、お金の実質的な価値は下がるからだ。 「物価が上がっているとき、あなたは買い物を控えようと考えますか?それとも、もっと高くなる前に買っておこうと思いますか? 経済学的に考えるなら、後者の行動が合理的です。お金は持っているだけなら単なる紙切れやデータ。価値が下がる前にいかにモノやサービスに変えるかが重要なんです」(永濱氏) 日本は四半世紀超の長い間、持続的に物価が下がるデフレの状態にあり、お金の実質的な価値が上がっていた。その結果、日本の家計の金融資産は現預金が5割超、株式・投資信託が約15%と、圧倒的に現預金の割合が高くなっている。一方で米国では、現預金が14%、株式・投資信託が5割超(図参照)。現預金と投資の割合が日本とは真逆なのだ。