「貯蓄より投資へ」はなぜ根付かないのか――。エコノミストが指摘する3つの理由
リスクがいやならiDeCoで定期預金
部長職に就いても収入は低いまま…。老後への備えや自分の資産を守る意味でも投資は不可欠なのかもしれない。では、どのようなタイミングで何から始めればいいのか。永濱氏は、「思い立ったときが投資を始めるタイミングだ」と話す。ただ、初心者がボーナスを握りしめて個別銘柄を一気に買ったり、仕組みをよく理解しないままFX(外国為替証拠金取引)を対象に選ぶのは勧めない。 「たとえば円安が進んだ時点で、慌てて円だけではダメだ!と外貨預金に向かう人がいます。外貨運用では、預け入れしたときの為替レートよりも円安のときに払い戻しすれば為替差益が得られますが、今より円高になった時点だと投資金額が目減りするリスクがあるのです。金利が魅力的でも、預け入れしたときの為替レートより円高の時点で払い戻ししてしまうと利息を帳消しにしてしまう。このように金融リテラシーが低いと、思わぬ損を出すことにつながりかねません」 (永濱氏) 投資で損をするのは絶対にいやだという人には、「まずはiDeCo(個人型確定拠出年金)で、定期預金を選ぶ」という方法がある。超低金利とはいえ、掛け金が所得控除になるメリットは大きい。定期預金だとしてもiDeCoに加入することで、何もしない状態よりは所得控除される分だけ実質的に運用利回りを見込める効果がある。一方で、株式や投資信託などの運用益や配当金などが非課税になるNISA(少額投資非課税制度)も活用しない手はない。NISAでは定期預金のような元本保証商品はないが、「リスクを小さく抑えることはできる」と永濱氏は言う。その方法とは、「長期・積み立て・分散・ほったらかし」による投資をすることだ。
結局、何から始めればいいのか?
「具体的には、多くの銘柄を含む株式 のインデックスファンドに月々、積み立て投資をします。 例えば、米国や全世界の株式市場の動きをとらえる投資商品を選べばそれだけで分散投資の効果があり、リスクを抑えられます。また、一定金額で毎月定期的に購入する積み立て投資なら、価格が高いときには購入口数が少なくなり、価格が安いときには購入口数が多くなるといった買い付けとなり、高値で一気に購入してしまい失敗した!という価格変動リスクを低減できます。加えて長期間、運用で得た収益をふたたび投資し続けることで、利息が利息を生んで膨らんでいく複利効果が期待できます」(永濱氏) 積み立て投資は早く始めれば始めただけ、複利の効果が増す。たとえば毎月積立額3万円を年率4%で運用した場合、10年後は442万円だが30年後は2000万円を超える。少額でも若いうちに投資を始めて時間を味方につけることで、効率よく成果を出すことが可能だということだ。 ここまで読んでもまだ「投資は怖い」という印象が拭えない場合、現金の代わりにたまったポイントを使って株式や投資信託を購入できる「ポイント投資」から始めるのもいいだろう。投資は、仕組みを頭で理解するだけでなく、実際の運用によって株の値動きに対する慣れも必要になってくる。この記事に出合った今こそ、投資を始める絶好の機会だ。