「水害後の戦いは片付けと猛暑」西日本豪雨で実家が被災した元NHKキャスターの経験談
2018年の西日本豪雨で島根県江津市の実家が被災し、当時NHKのキャスターとして現地取材もした小笠原さん。前回、実家が被災した様子を語ってくれたが、いちばん大変だったのは被災後だったという。 ▶︎すべての写真を見る
今回は、小笠原さんの経験談から、私たちが備えられることは何かを紐解いてみよう。
教訓① 必要なのは水! 備蓄水を常に確認すべし
江の川の下流域にあたる江津市は、2018年7月7日の明け方に川が氾濫し、浸水被害が発生した。 小笠原さんは「床上70センチ」の浸水被害に遭った実家に、翌日の7月8日から毎週末、片付けに通った。 「堤防があるため自宅が浸水することを想定せず、家の中は何も対策をしていなかったんです。冷蔵庫も食料もダメになって、断水も1週間ほど続きました。毎週末、水や食料、日用品を届けに行っていたのですが、備蓄することがいかに大切かを思い知りましたね。 飲み水は、1日1人2Lくらいを目安に持っていった水でやり繰りしていました。でも、生活用水を含めると全然足らなくて、給水車から水を汲んで凌ぎました。料理はお皿にラップをかけたりして水を節約していましたね」(小笠原知恵さん、以下同)。 この経験を活かし、小笠原さんの自宅では2Lの水1ケース以上を必ずストックし、実家にも定期的に備蓄水の量を確認しているという。
小笠原さんの実家は平屋建て。床下70センチの浸水被害に遭ったあと、家族はどのように過ごしたのだろうか。 「実家には両親と95歳の祖母が暮らしていたのですが、家のすぐ隣に倉庫として使っている2階建ての家屋があるんです。畳もなく、ただ床があるだけですけど、浸水しなかった布団を運んでなんとか寝泊まりすることはできました。 ガスはプロパンなので使えましたが、電気を使うのは怖かったですね。コンセントも水に浸かっていたので、すぐには使えない。通電するときは、『本当に大丈夫かな……』って言い合いながら恐る恐るつけました」。
教訓② 水に浸かったモノを外に運び出すのは超重労働
実家の被害状況は「床上70センチ」。水の力は凄まじく、冷蔵庫も傾くなど、屋内は想像以上に荒れていたという。 「前日に自治体の呼びかけで、車だけは高台の上に移動させておいたそうです。でも、冷蔵庫やテレビ、畳、襖、椅子など、70センチ以下のものはすべて被害に遭いました。床も剥がれていたし、タンスも1日浸かっていたので下段の方は開かなくなって使えなくなりました。 当時、濡れた家財をまとめて処分したので、本当に多くのものを失いました。写真も一緒に捨てていたようで、昨年、私の結婚式があったのですが、子供の頃の写真が全然なくて……。思い出がなくなったのは寂しかったですね。 家は保険に入っていたし、激甚災害に指定されたので補助金も出ましたが、床の張り替えなどもあったので、持ち出しでも200万円以上はかかりました」。