「水害後の戦いは片付けと猛暑」西日本豪雨で実家が被災した元NHKキャスターの経験談
片付けは浸水した家財を外へ運び出すことから始めたという。 「ものを運び出そうにも、両親も60代で体力に限界があり、畳などは水分を含んでかなり重たくなっていました。自分たちだけで運び出すのは大変で、ボランティアの方たちに助けてもらってやっと……という感じ。両親も祖母も喪失感とともに疲れ切っていて、体力的にも精神的にも参っていたと思います」。
教訓③ 冷房が使えない夏場の災害に備えよ!
夏の災害で最も過酷なのは、暑さとの戦いだという。 「夏の場合は、特に熱中症に注意が必要です。豪雨のあとは晴れることが多いですよね。当時、扇風機を使えたのが幸いでしたが、とにかく暑くて体力がもたない。断水しているうえに冷蔵庫も使えないので、冷たいものがないんです。 実家に行くときに欲しいものを聞いたら、『アイスや冷たいものが欲しい』 と。しばらく冷たいものを口にしてなかったのが辛かったようです」。 小笠原さんの防災リュックには、熱中症対策として塩分補給のタブレットや経口補水液なども入れているそうだ。
教訓④ 清掃時の肌の露出・素手の作業は厳禁
水害後の片付け・清掃時に気をつけるべきは衛生環境。濁流で流れてきた水は、下水道などの汚水が混じっている。感染症のリスクもあるため、清掃時は肌の露出も避けるべきだ。 「家の中は、土やごみを含んだ水で泥だらけ。作業をするときは軍手やメガネをしていましたが、暑くてフル装備はできませんでした。そのせいで、粉塵なのか目も赤くなるし、露出していた部分の皮膚は痒くなるしで大変でしたね。 あのとき、アウトドアで着るような薄くて涼しい素材の長袖やパンツを持っていたら良かったなと思います。あと、目はメガネではなく、ゴーグルでしっかり守ったほうが良いと思います」。
教訓⑤ 復旧までの長期戦を覚悟せよ
結局、小笠原さんの実家がもとの暮らしに戻るまでには、ひと月以上かかったという。想像以上に時間を要したのは、「乾かす」時間が必要だったからだ。 「畳とかすぐ入れたらいいと思っていたんですが、床下が乾かないと畳も入れられないので、時間をかけて乾かし消毒する時間が必要でした。畳や床を張ってからでないと家具も入れられなかったので、結局8月のお盆までは片付きませんでした。水害発生からひと月ほどして畳が入り、少しづつ普段の生活が戻ってきたと記憶しています」。
「私は週末だけ片付けを手伝いに通いましたが、それだけでも大変でした。島根だけではなく、被害に遭われてそこで暮らしている方は本当にご苦労されたと思います。この状態が夏中ずっと続いたわけですから」。 ◇ 実家の被災を機に、小笠原さんはキャスターとして防災を呼びかけたい、ニュースでも防災の知識を伝えて住人の防災行動につなげてもらいたい、と防災士の資格を取得した。 次回は自分の身を守ることはもちろん、今回の小笠原さんのように離れて暮らす両親や祖父母を守るためにも押さえておきたい防災のポイントをご紹介。 池田裕美=取材・文
OCEANS編集部