「ニュースを繰り返し見ると心が疲弊する」パニック障害を経験した大場久美子がテレビのスイッチを入れない理由 #今つらいあなたへ
◆心療内科医 海原純子氏の「専門家の目線」
まずは“パニック発作”と“パニック障害”の違いについて知っておきましょう。パニック発作は突然の動悸や震え、吐き気やめまいに加えて、「このまま死んでしまうのではないか」「気がおかしくなるのではないか」といった恐怖感などさまざまな症状があらわれることです。メンタルの問題だけでなく、血液中の二酸化炭素濃度と酸素濃度のバランスの変化などをきっかけに、誰にでも起こる可能性があります。 ただ、パニック発作が起こった後に「こんなときもあるから大丈夫だ」と思える人もいれば、「こんな発作がまた起こったらどうしよう」と“予期不安”を抱えてしまう人もいるんですね。前者はパニック発作が起こったのはたまたまだと認識して日常生活を送ることができるのですが、後者のように予期不安を抱えてしまうと、パニック発作が起こったときと同じ場面を避けるようになるんです。発作が起こったのが電車の中や会社だった場合、電車に乗るのや会社へ行くのが怖くなってしまう。そうなると日常生活に支障をきたすので、パニック障害と診断されます。 パニック発作が頻繁に起きるようになって日常生活を送るのが困難になったり、パニック障害なのではと不安になったりした場合は、医師に相談するのが一番です。まずは動悸や息切れが他の病気によるものでないことをチェックしたうえで、パニック発作は10分ほどでおさまることを理解し、場合によっては処方された薬を適切に飲みます。そして、発作を落ち着かせるための呼吸法や、大場さんのようにバイタルチェックをして安心するなどの方法を取っていきます。 電車内など特定の場面で、パニック発作が起きるのではと不安になることもあるかもしれませんが、発作は10分ほどでひどい状態が収まります。長くても30分ほどで、状況は改善するはずです。発作が起きても逃げ出さずにやり過ごせるようになっていくことを覚えるといいでしょう。発作を怖がり行動を回避することなくやり過ごすことで、自信が生まれます。決して自身のメンタルが弱い、自分がダメな人間だと思う必要はありません。 もし、パニック発作がいつ起きるか不安でしかたない場合は、大場さんのように身近な信頼できる人に相談してみるのもひとつの手です。事前に知っておいてもらうと安心材料になります。パニック発作が起きたことがある人は意外と多いので、周囲の人から「実は私も発作が出たことがある」と言われるかもしれません。そういった人に共感してもらって、助けてもらえると安心ですね。 4月から新生活がスタートした方も多く、新しい環境で不安を感じている方が多いかもしれません。何か心配なことがあれば、企業内の産業医や養護教諭、地域のお医者さんなど正しい医療知識を持った方に相談してみてください。 ----- 大場久美子 1960年、埼玉県生まれ。俳優・心理カウンセラー。1973年、子役としてテレビ・CM・映画に出演。1977年『あこがれ』で歌手デビュー。1978年主演の「コメットさん」(TBS)でブレイク。「1億人の妹」のキャッチフレーズでトップアイドルになる。2008年にパニック障害を克服していたことを告白。2022年に自身のYouTubeチャンネルで宣言しトータル107資格取得を達成。さまざまなスキルを総合的に用いたカウンセリングや講演会、東日本大震災以降の被災地支援なども行っている。 海原純子 博士(医学)・心療内科医・産業医・昭和女子大学客員。東京慈恵会医科大学卒業後、同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008~2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。日本医科大学医学教育センター特任教授(~2022年3月)。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#今つらいあなたへ」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。つらい気持ちを抱えた人の「生きるための支援」につながるコンテンツを発信しています。