「ソフト老害という言葉が一人歩きしている」鈴木おさむが感じたメディアと言葉の怖さ
2024年3月末で放送作家・脚本家から引退することを公表した鈴木おさむさん。自身の著作の中で提唱した「ソフト老害」は、多くのメディアやテレビ番組で取り上げられ、さまざまな反響を呼んだ。「ソフト老害という言葉が一人歩きする怖さを感じている」という鈴木さんに、ソフト老害という言葉を発信した理由やソフト老害にならないために必要な視点について聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
“ソフト老害”は自分への戒めの言葉
ーー鈴木さんが発信したことで「ソフト老害」という言葉が広がっている現状についてはどう思われますか。 鈴木おさむ: 「ソフト老害」という言葉がいろんなメディアで取り上げられていますが、結構一人で歩いていっちゃっている怖さはありますね。「ソフト老害」について、それぞれの番組で僕の言葉として、どんな意図があったのか発信できればいいですけど、意外と時間がないし、お金がないから端折ろうとするんですよね。 どうして言葉が一人歩きすると怖いかというと、ルッキズムがこれだけ叩かれている中で、「美女ランキング」なんてできないのに「イケメンランキング」は平気でやるじゃないですか。男子と女子の違いもありますけど「イケメン」という言葉のポップさと、ソフトな印象があるから良しとされている部分もあって。ポップになったが故に、「実はそれダメなんじゃない?」っていうことも、抜け道を使っているところがあるんです。だから、「ソフト老害」っていう言葉も、少しポップに見せてしまったがために、変な使われ方をしていくのは怖いなと思っていますね。 僕としては、あえて「ソフト老害」と名付けることで「自分もそうかな?」って確認をして欲しいんです。だけど、空気を読めないおじさんに対して「あいつソフト老害だよ」と言いやすくなってしまっているのかも。「老害」は言いにくいけど、「ソフト」をつけることで言いやすくなってしまっていると感じる部分はあります。「ソフト老害」ってこれから普通に使われていくと思うんですよ。言葉をつくってきた人間として、改めてメディアの怖さと言葉の怖さを感じました。 ーーそもそも「ソフト老害」という言葉を発信されたのにはどういった理由があったのでしょうか。 鈴木おさむ: 『笑っていいとも!』でADをしていた、三谷三四郎くんが運営しているYouTubeの『街録ch』がきっかけでした。以前、僕は三谷くんと一緒に番組を作っていたんですけど、会議のときにディレクターが一生懸命考えてきたものに対して僕が「NO」というと、プロデューサーのみんなも僕の意見に乗っかって「NO」という流れになっていたと動画の中で三谷くんが言っているんです。それで、僕を恨んでいたっていう話をしているんですよね。それを見て「三谷くんがこう思っているなら、きっと同じように感じている人はもっといるな」と思ったんです。 20~30代の子には「みんなの味方だよ」って言いながら、「だけどさ……」って結局若い人たちの意見を潰していた。自分は若者寄りの考えを持っていて、みんなに支持されていると思っていたけど、三谷くんの動画を見たときに「俺、嫌われているな」と思ったんです。嫌われるのはいいんですけど、バランスを取ろうと行動して嫌われているんだとしたら良くないなと。この状態にあえて名前をつけるなら老害に近いんじゃないかと思って、自分への戒めも含めて、わざと「ソフト老害」と名付けました。