【NBA】サンダーの新たなビッグマン、アイザイア・ハーテンシュタイン「0勝0敗で優勝を語るのは正しいアプローチじゃない」
チェット・ホルムグレンとのツインタワーに期待
アイザイア・ハーテンシュタインはフリーエージェントとなってニックスを離れ、サンダーと3年8700万ドル(約140億円)の契約を結んだ。彼はまだビッグネームとは言えないが、NBA6年のキャリアで5つのチームを渡り歩きながら成長してきた。ゴール下で相手と肉弾戦を繰り広げるセンターはケガの多いポジションで、『消耗していない』健康な身体と運動能力がモノを言う。それと同時にNBAの高度な戦術を実践できなければ、主力としては使えない。26歳のハーテンシュタインは、そのバランスがちょうど良い時期を迎え、昨シーズンのニックス躍進に貢献した。7.8得点、8.3リバウンドという数字以上に、攻守を機能させてチームを支える力が彼にはある。 サンダーは若手育成に注力し、チームに足りない経験を補う安価なベテランを獲得することはあっても、フリーエージェント市場で主力選手を取ろうとはしなかった。それで若手の成長する余地が潰れるのを嫌ったからだ。それでも西カンファレンスで1位となり、プレーオフでも勝てるチームとなった今、『勝つための補強』をやり始めた。 とは言ってもフリーエージェント市場でビッグネームを買い求めるわけではない。26歳でこれから全盛期を迎えるハーテンシュタインを獲得するのがサンダーらしいところ。サム・プレスティGMはハーテンシュタインについて「彼のプレースタイルは、ウチで育てている選手たちと対立するものではない。彼はチームを上手く動かす。みんなそんな選手と一緒にプレーしたがるものさ」と語る。 オフを迎えた時点でのハーテンシュタインは、ミッチェル・ロビンソン以上に不可欠なセンターとしてニックスと再契約を結ぶものと思われていた。しかしニックスはミケル・ブリッジズ獲得のチャンスに飛び付き、ハーテンシュタインを抱えていられなくなった。これまで自分に合うチームに出会うまで根無し草のキャリアを送ってきただけに、彼の不安は大きかっただろう。 サンダーの一員として初めてメディア対応を行ったハーテンシュタインは「正直に言うとニックスはチームメートもファンも僕を愛してくれて、本当にありがたかった。でも、こうしてサンダーに来ることができて良かった」と話す。「サンダーの文化は離れたところから見ていたけど、実際に触れてみて期待通りのものだと分かった」 まだドイツにいた頃、彼はサンダーを応援しており、彼にとってのサンダーはケビン・デュラントとラッセル・ウェストブルック、ジェームズ・ハーデンのトリオを擁していた時代の印象だそうだ。今回、サンダーとの契約が決まって最初にメッセージをくれたのはウェストブルックで、サンダーを離れてもう5年になるが、かつてのエースは「困ったことがあれば何でも言ってくれ」とハーテンシュタインに伝えたという。 サンダーではチェット・ホルムグレンとセンターでタイムシェアをするか、あるいはツインタワーを形成することになる。「どうなるか楽しみだ」とハーテンシュタインは笑みを浮かべる。「NBAで最も才能あるビッグマンの一人である彼と一緒にコートに立つのは刺激的だよ。彼が才能を発揮できるよう、僕はIQを生かしてダーティワークを少し増やすことになると思う」 アレックス・カルーソとハーテンシュタイン。派手ではないがチームに足りない要素を見事に埋める補強を見せ、若きサンダーは優勝候補へと飛躍しようとしている。しかし、ハーテンシュタインは落ち着いたものだ。ヘッドコーチのマーク・ダグノートと話した際、2人の意見が一致したと彼は言う。「チームに何が必要かという僕の質問に対し、プロセスを飛ばさず一歩ずつ進むだけだ、と彼は答えた。僕の思いと一緒でうれしかった。人々は優勝を口にして、そのために何をすべきかを語りたがる。だけど『焦らず一歩ずつ』が正しいアプローチだと思う。昨シーズンはそうやって一歩前進した。同じように次の一歩を踏み出せばいい。0勝0敗で優勝を語るのは正しいアプローチじゃないよ」