「塩をひとつまみ入れると美味しい」米英の外交にも影響した“紅茶の飲み方”論争
「ボストン茶会事件」だけでない! 紅茶が変えた世界史
特にアメリカとイギリスの間には「ボストン茶会事件」という因縁の対決があったことは誰もが知るところです。「世界史で習った気がする......」という方のためにかんたんに解説しましょう。 1773年、当時イギリスの植民地だったボストンで、英国船に積まれていた茶箱342個すべてを海に投げ捨てるという大事件が発生。ボストン港は巨大なティーポットと化し、世界一有名なティーパーティーは、その後の独立戦争へと発展しました。 これを機に、アメリカで紅茶のボイコット運動が加熱し、コーヒー派が増えたともいわれています。 また、茶の取引がきっかけとなりイギリスと中国の間で起こった「アヘン戦争」によって租借地となった香港は、1997年に返還されたものの、今もなお社会に大きな影響を与えています。 そして、19世紀から20世紀にかけてのイギリスやアメリカでは、紅茶やアフタヌーンティーが、女性の自立と解放、フェミニズムにも重要な役割を発揮しました。 女性が一人で自由に出歩いたり発言することが許されず、社会的な束縛があった時代、女性たちはティーパーティーの名のもとに集まり、紅茶を片手に女性に対する不当な扱いについて語り合うようになっていくのです。 そんな女性たちの独立心は大きなムーブメントとなり、女性解放や参政権運動へとつながり、社会を変え歴史を動かしたのです。 このように、紅茶というのは単なる嗜好品の域には留まらず、その背景には国ごとに培われてきた文化、宗教、交易の歴史から、植民地抗争や独立戦争、民族や奴隷問題、政治経済情勢まで、グローバルな知見が詰まっています。 それゆえイギリスで活躍するエグゼクティブにとって紅茶の知識を備えることは必須教養。ビジネスシーンにおいて紅茶は共通の話題であり、パートナーとして相応しい教養を備えているかどうかを見極める判断基準にもなっているのです。 日本でも昨今の若い世代のアルコール離れやパンデミックの影響から、接待や飲みニュケーションの場が夜から昼へと移行し、アルコールの力に頼らずにホテルのラウンジでスマートに行う会合が増えています。その結果、知的なジェントルマン風の紅茶男子やヌン活男子が注目を集めています。