「塩をひとつまみ入れると美味しい」米英の外交にも影響した“紅茶の飲み方”論争
一度は飲みたい、世界の銘茶3選
紀元前に中国で生まれた茶は、ティーロード(お茶の道)と呼ばれる陸路や海路を経て、世界各地へ伝えられました。世界中に広まったお茶は、長い歴史の中で、その土地の気候風土、生活様式、宗教にあわせた喫茶法が生まれ、文化として育まれていきました。最後に世界の珍茶文化をご紹介します。 ・チベットの塩バター茶 チベットの茶文化は古く、7世紀には「茶馬交易」を通じて中国からお茶が渡っていました。そんなチベットで遊牧民から広まったのが、非常に珍しい「塩バターミルクティー」。 中国茶を削って煮出し、そこにヤギのミルクとバター・岩塩を入れてよく混ぜてお茶を淹れます。恐る恐る飲んでみると、お茶というよりもスープに近い味で、違和感はまったくありません。 この塩バター茶はチベットだけではなく、モンゴルやブータンなどユーラシア大陸の高原エリアにとっては重要な食文化。高地の厳しい気候の中で、身体をあたため、栄養分を補給するために、切り離すことのできない存在なのです。 ・モロッコの激苦激甘ミントティー モロッコでは、ガンパウダーという火薬のような形状をした緑茶にフレッシュミントを枝ごと投入し、塊の砂糖と一緒に煮出してお茶を淹れます。ミントも砂糖もだんだんと量が増えていき、スッキリとした飲み心地のミントティーというよりも激苦激甘茶。 その裏には飲酒が禁じられているムスリムにとって、お茶はお酒代わりという宗教上の理由もあります。刺激を求めるあまりミントだけではなく、タイム・セージ・サフラン・松の実...とレベルアップしていくそうです。 ・香港の紅茶×コーヒー=鴛鴦茶 香港で飲まれているのが、紅茶とコーヒーを混ぜあわせた新感覚ドリンク。鴛鴦とはおしどりのこと。東洋医学において、茶は冷、コーヒーは温、相反するふたつを書けた合わせた禁断飲料ともいえる存在です。 淹れ方も何種類かあり、紅茶とコーヒーの抽出液を混ぜ合わせる方法や、紅茶の茶葉とコーヒーの粉を混ぜたものを抽出する方法、ホットの熱鴛鴦、アイス凍鴛鴦などなど、バリエーションも豊富。 日本でもコメダ珈琲のメニューに登場したこともあり、気軽に作ることもできるので、興味があればチャレンジしてみてください。 このように、世界には様々な茶文化が存在し、中には驚くようなレシピも存在します。 今回、一夜にして話題の人となったフランクル教授は「外交問題を引き起こすつもりはなかった。化学がニュースになってくれると嬉しい」と述べています 国レベルのジョークを言い合えるのも平和の証。これを機に、お茶の世界でも様々な違いと向き合い、摩擦を恐れずに異文化コミュニケーションを広げることで、茶の輪が広がるのではないでしょうか。
藤枝理子(ティースペシャリスト)