日本の女性医師の割合は23% OECD加盟国で最下位…増えたらどうなる?
「モノトナス」より「梁山泊」
同じ価値観、世界観、能力で固めた「モノトナス」な集団からは、秀逸なアイデアやイノベーションは起きにくいのです。異質な人間の集まった「梁山泊」のような組織のほうが発展性は高いし、アクシデントにも強いです。女性は、男性とは異なる視点、異なる世界観、異なる価値観を持っていることも多いですから(そうじゃないこともありますが)、そういう違った視点が組織を豊かにし、強くします。 ニューヨーク市では三つの病院で働きましたが、女性の比率は日本の病院よりもずっと高かったです。まあ、米国もさきにあげたジェンダーギャップランキングでは43位。世界基準で言えば決して「女性が活躍できる」社会とはいえないのですが、日本よりはずっとましなわけです。 そして、ニューヨーク市の面白いところは、世界中からいろんな人が集まってくるところです。ある病棟で一緒にチームを組んだときは、リーダーがイスラエル出身のユダヤ人、チームメートがシリア人と韓国人だったりしました。多様な宗教や文化、人種のなかで協働することで、大いに勉強になり、刺激にもなり、また相対的に自分や日本を理解するのにも役に立ちました。ニューヨーク市に住むことで全部が分かるかと言えばそうではなく、そういう環境にどっぷりつかっていることで逆に米国の内陸部――トランプ次期大統領の支持層が多い地域――のことに理解が及ばなかったことを後年、思い知るのですが。 世界大学ランキングで東京大学は28位です。トップにいるオックスフォードやマサチューセッツ工科大、ハーバード、プリンストン、ケンブリッジ、スタンフォードとかは必ずしもクオータ制を導入しているわけではありませんが、多様性(diversity)を担保するために、入学の仕組みを複雑にし、単純にテストの成績だけを根拠に学生を入学させていません。東大はこうした大学の高みを目指さねばならないのです。
医療現場で女性は働けない?
激務の医療現場で女性は役に立たない、とかつて「わざと」男女の入試の点差をつけ、下駄を履かせて男子を入学させていた医学部がありました。今でもこのロジックを支持している男性医師は少なくありません。これがモノトナスな集団の知性の限界です。 世界を見れば、経済協力開発機構(OECD)加盟国で、女性医師の割合は平均50%。「女性は半分」が「普通」なんです。ちなみに日本は23%で最下位です。 「医療現場は過酷だから女性には向いていない」というならば、他国の医療環境は日本とは違うのでしょうか。諸外国には病人は発生しにくいのでしょうか。あるいは他国の女性は日本の男性並みにマッチョでタフなのでしょうか。そんな荒唐無稽な仮説は成り立たないですよね。むしろ「医療現場が過酷なのは、必然ではなく日本の医療システムが非合理で、不必要に過酷になってしまっている」と考えるべきではないでしょうか。 https://www.oecd-ilibrary.org/sites/7a7afb35-en/1/3/8/3/index.html?itemId=/content/publication/7a7afb35-en&_csp_=6cf33e24b6584414b81774026d82a571&itemIGO=oecd&itemContentType=book#:~:text=The%20proportion%20of%20female%20doctors,and%20Korea%20(Figure%208.7). 医学部の教授に女性が増えたら、「女性が働きやすくなるような医療現場」を作るのに一役買ってくれることでしょう。男ばかりのマッチョでタフな集団では思いつかなかった秀逸なアイデアを出してくれることでしょう。そのアイデアが作るのは、「男性も働きやすい医療現場」です。それは皆が、(患者さんも含めて)望んでいたものです。全体で、総和的に得をする。その手段として、クオータ制はよくできているのです。特に日本のような環境では。