クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領
ウクライナ軍としては、この基地攻撃用に射程約300キロメートルのアメリカ製地対地ミサイル「ATACMS」やイギリス製巡航ミサイル「ストームシャドー」(射程250キロメートル超)を使用することを想定している。 しかし、ロシアとのエスカレーションを恐れるバイデン大統領はATACMSだけでなく、アメリカ製部品を使用しているストームシャドーについても使用を禁止している。 ■長距離射程兵器の使用を迫るゼレンスキー
直前に使用解禁での合意説も出ていた、先のワシントンでの米英首脳会談でも、結局解禁の発表はなかった。 このためゼレンスキー氏はさらに強い決意をもって、バイデン氏との会談に臨む構えだ。解禁がなければ、ロシアとの戦争で勝てないと必死に訴える構えと言われている。 これに対し、再選を断念し2025年1月で任期が切れるバイデン氏がどんな対応を示すのか注目される。 もしバイデン氏が使用禁止を解除した場合、ロシアにとって、軍事的に相当の打撃となることは間違いない。米欧製ミサイルが空軍基地を目指してロシア領奥地まで飛び交うことになれば、プーチン氏の国内での権威も丸つぶれになるだろう。
軍事的狙いに加えて、ここにこそ、ゼレンスキー氏の政治的意図があるとみる。厭戦気分がロシア軍内部にも広がり、侵攻停止を求める声が出る事態を狙っているのではないか。長引く侵攻の中、ロシア軍内部での反乱の動きを懸念していると言われるプーチン氏がこの首脳会談を注視しているのは間違いないだろう。
吉田 成之 :新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長