クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領
■ロシア軍が露呈した大問題 今回の反攻作戦開始でロシア軍は大きな問題点をさらけ出すことになった。それは何か。現在、ロシア国内にはクルスクでの作戦に新規に投入できる予備的実戦部隊が存在しないという事実だ。 今回ロシア国防省は、これまで最重要な攻撃箇所だった東部ドネツク州での激戦地ポクロフスクやチャシフヤルから一部部隊を剥がして、クルスクに投入せざるをえなかった。 これまでも、戦死者の増大をまったくいとわない異常な肉弾突撃攻撃を繰り返しているロシア軍にもはや国内に予備兵力がないことを再三指摘してきたが、このことがこれまで以上に明らかとなった。
ロシア軍の攻勢でウクライナ軍が苦しい状況に追い込まれていた東部のポクロフスクをめぐっては、プーチン氏がロシア軍に対し2024年10月1日までに制圧するよう厳命していた。 しかし、ロシア軍がポクロフスクから空挺部隊など一部部隊をクルスクに転戦させたことで、もはやこの命令実行は事実上不可能だ。攻撃は続いているものの、命令は事実上撤回されたと言っていいだろう。 一部のロシア軍従軍記者は先日、ポクロフスク攻防戦について「放棄された戦線」と評したほどだ。東部戦線でロシア軍の攻勢が続いているが、肝心のポクロフスクなどで攻撃は大幅にトーンダウンするだろう。
最近、一部の内外軍事専門家やメディアで、ロシア軍が東部戦線からクルスクに反攻部隊を投入する以前に出回った説がある。つまり、ロシア軍が東部から部隊をクルスクに移動させなかったので、東部からのロシア軍兵力の一部引き剥がしを主目的としていたウクライナのクルスク越境作戦は「失敗だった」というものだ。 もともとウクライナ軍のクルスクへの越境作戦の主な目的は、上述したように、長期的占領により交渉材料にすることだ。ウクライナ軍はポクロフスクなどで確かに苦境にあったが、東部からのロシア軍部隊をポクロフスクからクルスクに転戦させることを主目的として越境したわけではない。