フリーザの姿で300日以上“ゴミ拾い”をする男。怪しい存在が「町のマスコット」に変わった理由
きっかけは高校生の時に参加したスポーツゴミ拾い
夕方とはいえ、強い日差しが照り付ける中、重い籠を背負ってゴミを拾うのは重労働だ。腰や肩が痛むので整体に通っているという。何がそこまでフリーザ氏を突き動かすのか。 「最初にゴミ拾いをしたのは、高校全体で参加した『スポーツゴミ拾い』というイベントでした。町がきれいになることと、人からの『ありがとう』が嬉しくて、18歳の時から『東の渋谷』と言われる柏で自主的にゴミ拾いを始めました。現在までに300日以上はゴミ拾いしてます」 フリーザの格好をしているのは、ある成功体験がきっかけだった。 「チラシ配りのバイトで、全然受け取ってもらえなかったんです。目立つ格好をしたら面白がって受け取ってくれるかもしれないと思ってフリーザの衣装を買いました(笑)。実際に配れるチラシの量も増えて、たくさんの人に声をかけてもらえるのがうれしくて味をしめました」
仕事を辞めてゴミ拾いがメインの活動に
茨城県の実家から常磐線で柏や天王台に通っているフリーザ氏。高校卒業後は介護士として働きながらゴミ拾いをする生活を続けていたが、今年に入って大きな決断をした。 「人間関係とかいろいろあって…仕事は辞めることになりました。小さいころから芸人になるのが夢だったので、フリーの芸人としても少し活動しながら、メインでゴミ拾いをやっています」 今の悩みは「活動資金がない」ことだという。仕事を辞めて以降、アルバイトで暮らす彼を支えているのは、ゴミ拾いで繋がった縁だ。 「活動を知って『スポンサーになりたい』と言ってくれる人がいるんです。コメ農家の方から支援してもらったり、天王台の『ばんばん亭』という食堂の店主が『いつ来ても無料で飯食わせてやる』と言ってくれたり、ありがたいことに食事には困らないですね」
代わりのいない「役割」に住民は感謝している
街灯の少ない天王台では、日が落ちると活動が難しい。19時過ぎにゴミ拾いを終えたフリーザ氏は、夕食をとるために先述のばんばん亭に入った。「お疲れ様」とフリーザ氏をねぎらう店主に「住人は彼をどう思っているのか」聞いてみた。 「天王台に、代わりにこの役割を背負ってくれる人はいません。誰もやりたがらないけど、やるべきことを率先してやってくれている。そこは彼をリスペクトしているので『いつでも食べに来いよ』と言いました。いつ来ても、どのメニューを頼んでもOKです」 「もっときれいに食え!」とかつ丼をかきこむフリーザ氏の頭を叩きながら、店主は笑っていた。ゴミ拾いに一日同行することで、フリーザ氏は住人たちにとって決して“怪しい奴”ではなく、地域に認められたマスコット的な存在であることが分かった。