73歳のタフネゴシエーターが登場、史上最年少→史上最高齢に交代したフランス首相「想定外」人事の背景
2カ月に及ぶ政府不在の状態を脱し、フランスでは9月6日、バルニエ元外相(73)が首相に就任した。 【写真で見る】史上最年長の首相となった73歳のバルニエ氏と前首相のアタリ氏 政治空白の原因は、6月初旬の欧州連合(EU)議会選挙でフランスでは極右・国民連合(RN)が圧倒的に躍進したことに危機感を持ったマクロン大統領が、国民議会(下院)の解散総選挙を実施。その結果、単独過半数に至る政党がなく、首相指名が難航したことだった。 ■無政府状態が2カ月も続いていたフランス 最も議席を獲得した左派連合・新人民戦線(NFP)に、反マクロン政権の急先鋒である不服従のフランス(LFI)が入っていたことで、LFIからの首相指名だけは避けたいマクロン氏は、選挙以降、史上最長の2カ月間、無政府状態を続けた。
マクロン氏の課題は、議会内の急進左派から中道左派、中道、中道右派、右派のすべてが納得する首相指名は不可能な中、対立と分裂を最小化する首相を探すことだった。 マクロン氏の中道連合・アンサンブルが左派系政党と手を組むのか、それとも中道右派と手を組むのかが注目されたが、8月下旬、各政党代表者との会談を重ねた結果、今や少数派の中道右派・共和党と手を組む選択を行い、バルニエ元外相を選んだ。 バルニエ氏の名前は首相候補者として頻繁には挙がっておらず、想定外の人選となった。無論、与野党が拮抗し、単独過半数の政党が存在しない中での今後の政権運営は容易ではない。バルニエ氏は早速、左派からの反発を考慮し、閣僚には左派も入れると約束した。
またバルニエ氏は、首相就任を受諾する条件として、政府の独立性を確認した。左派の反発が強すぎれば、政策決定が影響を受けることは必至であり、マクロン氏の意向を全面的に反映できない局面も考えられるからだ。 このまま政治が混乱し、マクロン氏が退任に追い込まれるか、レームダック化することを考えれば、バルニエ氏の提案をマクロン氏は拒否できなかったはずだ。理由はマクロン氏の方針を理解し、支持する人物を首相に任命すること自体が不可能に近い状況だったからだ。