EVは自然災害の“守護神”となり得るか? 緊急時の電力供給パフォーマンス! BYDの補助金「10万円増」から考える
協定が後押しするEVの新たな役割
中国の電気自動車(EV)大手・比亜迪(BYD)の日本法人であるビーワイディージャパン(神奈川県横浜市)は、2024年12月5日、フラッグシップモデル「シール」の四輪駆動仕様「シール・AWD」に適用されるクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)が、35万円から45万円に増額されたと発表した。この補助金の増額は、2024年11月18日以降に登録された車両が対象となる。 【画像】「えっ、これが現実!?」 電動車の「世界推移」をグラフでチェック! 補助金増額の背景には、同社の正規ディーラーが全国10拠点で自治体と締結している「災害時連携協定」の存在がある。この協定は、自治体と企業・団体が災害発生時に迅速で効果的な対応をするため、事前に役割分担を明確化し、必要な物資やサービスの提供、情報共有、緊急支援などを行うための取り決めだ。 特に、EVを活用した自治体との連携は、経済産業省が定めるEV購入補助金の評価基準において重要なポイントとして位置付けられている。 本稿では、災害時連携協定とEV補助金との関係性を深掘りし、EVが災害対応の重要なインフラとして日本の防災力向上にどのように寄与するのかを考察する。
自治体連携が生む災害対応の新潮流
ビーワイディージャパンによると、「シール・AWD」は価格競争力の高さ、優れた動力性能、洗練されたデザインが支持され、累計受注台数は約600台に達している。 特別価格572万円が設定されており、東京都内で購入する場合は国と都の補助金が最大約90万円適用され、実質価格は約482万円となる。この価格帯により、さらなる販売拡大が期待されている。 2023年10月、ビーワイディージャパンは愛知県小牧市と災害時連携協定を締結。これを皮切りに、 ・栃木県 ・東京都 ・沖縄県 ・静岡県 ・香川県 ・埼玉県 ・山梨県 など全国10拠点の正規ディーラーが各自治体と同様の協定を結んだ。この協定の目的は、災害時に迅速かつ安定した電力供給を行い、提供されたEVが避難所や施設に電力を供給することで地域住民に安心・安全を提供することだ。 BYDのEVは、蓄電した電力を家庭や家電に供給できる「ビークル・ツー・ホーム(V2H)」機能を備えている。これにより、停電時には電力供給源として活用できる。アットスリーの場合、1世帯分の電力を約4日間供給可能だ。 また、補助金の増額は、実質的な値下げ効果を持つ大きなメリットとなる。現在のCEV補助金(15~85万円)は、経済産業省が定める評価基準に基づいて決定されており、その基準には次の7項目が含まれる。 ・車両性能 ・充電インフラ整備 ・整備の体制/質の確保 ・整備人材の育成 ・サイバーセキュリティへの対応 ・ライフサイクル全体での持続可能性の確保 ・自動車の活用を通じた他分野への貢献 特に7番目の「自動車の活用を通じた他分野への貢献」は、災害連携協定とも深く関連している。車両の外部給電機能や、自治体とのレジリエンス(立ち直る能力)向上に向けた取り組みが評価されるポイントだ。 ビーワイディージャパンの場合、全国の正規ディーラーが自治体と災害連携協定を締結したことが、「シール・AWD」の補助金増額につながった要因と考えられる。