真面目な父がある日突然「カルト教団に入信」したら地獄だった…宗教2世の告白「原因は悪霊の祟り」「神様で治す」壮絶な体験談
藁にもすがる思いでハマった、やむにやまれぬ理由
平岡氏の両親は、元々寿司屋を営んでいた。 忙しくも幸せな生活。父は市場に連れていってくれたり、閉店後に遊んでくれたりしたという。入信した理由はなんだったのだろう。 父は、自身の親と子の両方を白血病で亡くしている。とりわけ2歳の長男は投与された新薬が合わず、苦しみ抜いての最期だったという。 「医療よりも神だ」と、藁にもすがる思いでの入信だった。「とはいえ、それは本当に『藁』でしかなかったのですが」と平岡氏は振り返る。 中卒で苦労した両親は、社会に対する不信感も強かった。「加えて、重い障害のある子も生まれ、自分が保てなくなったのかもしれません」 平岡氏には、1歳年下の弟がいる。重度の知的障害と自閉症、強度行動障害をもって生まれてきた。両親は小さいころから言語教室などに通わせたが、発達の遅れは目立ち続けた。 ある日、父親が「原因は悪霊の祟りしかねえ。これからは神様で治す!」と宣言。「なんで私だけがこんな思いを……」が口癖だった母も入信した。
障害をもつ子のきょうだいが直面する過酷な現実
両親は仕事もそこそこにお金と時間を注ぎ込み、カルトでの活動にハマっていった。加えて、弟の突発的に暴れ、母はオーバードーズ(薬の過剰摂取)や家出を繰り返し、父は母親にDVを繰り返す。平岡氏と弟は食事も十分に与えられなくなっていた。 「家出した母はたいてい、私たちが飢え死にしそうなタイミングで帰ってくるのです。母が床に投げつけるようによこした食べ物を、空腹のあまり手で拾って食べたこともあります」。とにかく生きなければと積み重ねた一日一日だったという。 両親は家にいても、子どもの世話はしない。弟のケアは、平岡氏が負うこととなった。特に思春期以降の入浴やトイレ介助はきつかったという。「この子はこの歳になっても、自分でトイレにも行けないんだと悲しくなりました」 平岡氏のように、病気や障害をもった兄弟姉妹のいる子どもは「きょうだい児」と呼ばれる。寂しさや孤独感など、特有の悩みを抱えるケースが多い。 平岡氏の場合は親の問題も大きかったため、なおさら大変だったろう。小学校にもあまり通わせてもらえず、ほぼ不登校。社会性が育つチャンスを奪われていたのだ。 ある日、久しぶりに登校した平岡氏は友達にうっかり暴言を吐き、距離を置かれてしまう。当時、平岡氏の家庭は荒れに荒れていた。言葉づかいが乱れるのも無理のないことだ。 しかし、その経験を経て平岡氏は変わる。「当時の私は、皆が年齢と共に学ぶことが何一つ身につかず、例えるなら負債を抱えた状態。そのことに気づいて、自分に欠けているものを必死で取り入れはじめました」