真面目な父がある日突然「カルト教団に入信」したら地獄だった…宗教2世の告白「原因は悪霊の祟り」「神様で治す」壮絶な体験談
社会性を身につけ、カルトや両親と決別
平岡氏は、「こうなりたいな」と思うクラスメートの行動を徹底的に観察。分析して真似し、人に好かれるふるまいを身につけた。 元々人を笑わせることが好きだった平岡氏の周りには、いつしか多くの友達が集まるようになっていく。 40代になった現在では、X(旧Twitter)や関連団体を通じて、きょうだい児の支援にも携わる平岡氏。「きょうだい児はいつも周りの顔色を気にして生きているので、自分を偽りがち。でも、その必要はないのです」 幼少期から教義に洗脳され、大人になってから矛盾に気づいて苦しむ宗教2世は多い。しかし、「生まれつき胡散臭いものが嫌いだった」平岡氏は、両親や教団関係者の姿を批判的な目で見ていた。 平岡氏は幼いながらに、弟に言葉や数、道路の渡り方などを教えていた。しかし、少しずつ進歩していた弟の状態は、両親の入信後、良くなるどころかどんどん悪くなっていく。暴力も増え、平岡氏は殴られて鼓膜が破れたこともあった。 「商売繁盛」を祈っているのに、営んでいた寿司屋は台無しに。「家内安全」を祈っても、父の暴力や母の家出は止まらない。「全く結果が出ていない」と気づいた平岡氏は、カルト教団からできるだけ早く足を洗うと決めた。 高校卒業後、上京。浪人生活の末、慶應義塾大学に合格し、就職後は両親と決別した平岡氏。現在は夫と暮らしながら、きょうだい児に関する情報発信も行っている。
カルトにハマりがちなのは「◯◯がない人」
カルトにハマってしまう人は、どのような特徴をもっているのだろう。 かつて、平岡氏が信者に入信の理由を聞いたところ、多かった答えは「なんとなく」だった。「『なんとなく不安』。自分で身を守れる自信がないから教団に依存するのです」 危ないのは、自己肯定感が低く、自信がない人だ。世間で評価されずくすぶっている人も要注意だろう。 中学時代の平岡氏に「何でも質問しなさい」と教団からの勲章を見せびらかした幹部も、「お仕事は何をやってるんですか?」と聞くと、にわかに口ごもったのだという。 平岡氏の両親の場合、肉親を亡くしたことや子どもの障害がカルト入信のきっかけだった。しかし現代では、ボランティア団体を装った勧誘やSNSなどで「気がついたら抜け出せなくなっていた」ケースも存在する。 ちょっとした自信のゆらぎ、友人が欲しいという気持ち。ささいなきっかけがカルトへの入り口につながらないよう、私たちは互いに支え合い、安心できる場を作る必要があるだろう。 取材・文/中村藍
平岡 葵(漫画家)