ついに職務停止…尹錫悦大統領「5回の談話」の恐るべきKY度
21世紀の民主主義がもどかしい
同時に、こうも思った。これほど高邁無私なことを考えているのなら、なぜこれまで国民と真摯(しんし)に対話してこなかったのか? あと1時間以内に大統領の職務が止まるという時に述べても、「いまわの際」の「遺言」にしかならないではないか。 今後、憲法裁判所が「弾劾訴追は妥当」との判断を下せば、尹錫悦大統領は「ただの韓国人」となる。いや、「疑惑のデパート」と言われる金建希(キム・ゴンヒ)夫人とともに、「内乱罪」などの罪を着せられて監獄行きは免(まぬか)れないだろう。 そしてかなり高い確率で、尹大統領の最大の政敵である李在明(イ・ジェミョン)「共に民主党」代表が、後釜の大統領に就く。その奔放な物言いから「韓国のトランプ」との異名を取るが、私は「反日モンスター」と呼んでいる。李在明代表に関しては、いま発売している『週刊現代』の巻頭3ページで詳述した。 それにしても、民主主義とは、一体何だろう? 「韓国のCNN」ことYTNの解説者が思わず、「もどかしい」()と口走っていた。そう、21世紀の民主主義がもどかしい……。 <今週の新刊図書> 歴史戦と外交戦 山上信吾、山岡鉄秀著 ワニブックス 1700円+税 山上信吾前駐豪大使が書かれた『日本外交の劣化』(文藝春秋)は、今年読んだ本の中で秀逸だった。山上大使のことを「変人扱い」する霞が関関係者もいるが、日本以外の大使というのは、エマニュエル駐日米国大使や呉江浩駐日中国大使らを見ても分かるように、得てして「才能溢れる変人」が多い。 そんな山上大使の「続編」として本書を読んだ。第1章の日豪史は知らないことばかりでフムフム。第2章では、在豪邦人がまもなく10万人を超え、在中邦人を追い越すことなどを知ってヘエー。第3章の外交とメディアは、身につまされることもありイヤハヤ。第4章の日本外交の「宿痾(しゅくあ)」はアチャー。そして第5章の日本外交の再建は、ソーダヨ! 結論として、山上大使の本は「面白くてためになる」(この言葉は弊社の社是でもある)。もしトランプが日本の首相なら、山上大使を駐中国大使に任命していたかもしれないと、読後の妄想が膨らんだ。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)