「もう左手がダメになってもいい覚悟があったのではないか」パリ五輪卓球女子シングルス銅メダルの早田ひなが「今は金メダルよりうれしい」と号泣した理由とは?
試合は準々決勝で平野美宇(23、木下グループ)をフルセットに末に破ったシン・ユビンに、第1ゲームを9-11で奪われた。第2ゲームも10-11でゲームポイントを握られる苦境から、3連続ポイントをあげて奪い返した。 患部に負担がかかるからか。特にバックハンドでフルスイングできない戦いぶりが、これまでの対戦成績で早田が4戦4勝と優位に立つシン・ユビンに、苦戦を強いられる要因になった。松下氏も早田の序盤の戦いぶりをこう振り返る。 「プレーそのものは、早田選手の本調子ではなかったですよね。まずミスがすごく多かった。さらに打つタイミングなどでの速さといったものも足りなかったし、それが戦いやすいはずのシン・ユビン選手と、接戦になった要因だと思っています」 迎えた第3ゲーム。この試合のターニングポイントが訪れる。 再びゲームポイントを、今度は7-10と3点差で握られた早田は怒涛の5連続ポイントを奪取する。流れを食い止めようと、9-10となった段階でシン・ユビン側は1試合で一度だけ取れる60秒間のタイムアウトを要求した。しかし、早田が相手の抵抗を寄せつけなかった第3ゲームを、松下氏はこう分析した。 「何とかして逆転しようと必死だった早田選手に対して、シン・ユビン選手の方が勝ちを強く意識していた。タイムアウトをはさんでも連続ポイントを奪うケースはなかなかないですけど、ただ実力的には早田選手の方がかなり上なので、シン・ユビン選手の心境の変化を含めて、それらが第3ゲームの結果に出たと思います。卓球を含めたアスリートにとって、五輪でメダルを取るチャンスを迎えたからには絶対に逃したくない。左手がダメになってでも、という早田選手の気持ちは僕もよくわかります」 第4ゲームも11-7で制した早田は、第5ゲームこそ10-12で落としたが、続く第6ゲームを11-7で制して歓喜の涙を流した。3-2から4連続ポイントを奪い、7-5と追いあげられた直後には自らタイムアウトを要求。流れを手放さずに、東京五輪3位の伊藤美誠(23、スターツ)に続く女子シングルスのメダリストになった。 東京五輪の伊藤は、女子シングルス史上で初のメダルを獲得しても涙はなく、むしろ準決勝で中国勢に敗れた悔しさを募らせていた。対照的に号泣した早田の心境を、松下氏は「周囲への恩返しもあったと思います」と慮っている。
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