「カシミール紛争」再び? インドとパキスタン対立の歴史
一方、パキスタンのカーン首相は、有名な元クリケット選手で、高い知名度を武器に昨年、首相に就任。就任直後、「90日間で大きな汚職を撲滅する」と公言するなど、ほとんど不可能な目標を掲げながらも、高い人気に支えられてきました。そのカーン首相にとって、国民の間で反インド感情がこれまでに高まる中、譲歩することは困難です。 こうしてみたとき、インドとパキスタンの両首脳は、自分の支持を高めるために相手国への国民の敵意を利用しながらも、それが暴走しないように手綱を引くという綱渡りを演じる必要に直面しているといえます。その手綱さばきを誤った場合、両国の緊張はさらに高まりかねず、インドを支援するロシア、パキスタンを支援する中国やサウジアラビア、そして両国のいずれとも軍事協力を行うアメリカなど、周辺国を巻き込んで広がるものとみられるのです。
---------------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo!ニュース個人オーサー