「カシミール紛争」再び? インドとパキスタン対立の歴史
インドとパキスタンが領有権をめぐって係争中のカシミール地方は、パキスタンとインド、そして中国に囲まれた山岳地域です。この場所が、再び紛争の火種になる可能性が出てきています。インド・パキスタン両国の軍事衝突が激しくなっているからです。国際政治学者の六辻彰二氏が、第2次世界大戦後、長らく対立を続けてきた両国の歴史をひも解きます。
◇ 北朝鮮問題やシリア情勢ほど注目はされないものの、インドとパキスタンの対立は地域一帯に飛び火しかねないものです。両国が核兵器を保有していることは、緊張が高まる一因になっています。インドとパキスタンの対立についてまとめます。
イスラム過激派によるテロが今回の発端
2月26日、インド軍がパキスタンに向けて砲撃を開始し、パキスタン側も応戦したため、数千人の住民が避難する事態となりました。翌27日には、インドとパキスタンがそれぞれ相手の軍用機を撃墜したと発表。本格的な軍事衝突の懸念が高まったのです。 今回の衝突の直接的なきっかけは、2月14日にインド北部のジャンム・カシミール州プルワマで発生した、イスラム過激派ジェイシェ・ムハンマドによるテロ攻撃でした。インドの治安部隊の車両に爆弾を積んだ車が突っ込み、少なくとも42人が死亡しました。 インド政府はパキスタン政府がジェイシュ・ムハンマドを支援していると主張。パキスタン政府はこれを否定していますが、インド政府は報復を宣言し、18日にはプルワマでインド軍とジェイシュ・ムハンマドが銃撃戦を展開し、インド兵4人を含む9人以上が死亡しました。その後、インド軍はパキスタン支配地域にあるジェイシュ・ムハンマドの拠点を空爆したと発表。冒頭に述べたインド軍とパキスタン軍の接触は、この延長線上で発生したのです。 この時に撃墜されたインド軍機のパイロットは、パキスタン軍に拘束されましたが、3月1日に釈放され、インドに帰国しました。パキスタン政府はこれを「和平への意思表示」と説明していますが、両国の対立は根深く、パイロット解放で危機が収束するかは不透明です。