富裕層の「相続税対策」…納税資金準備のために〈なるはや〉で作成・確認すべき「3つの表」とは?【相続専門税理士の助言】
次世代への着実な資産承継を実現させるなら、相続発生直前の準備では間に合いません。とくに富裕層の場合は、人生の早い段階から、ライフプランニングを踏まえたうえで長期的な計画を立てることが重要だとえいます。富裕層の資産承継準備の基本について、メガバンク出身の公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「想定納税額」の見極め方
相続発生が迫ってから相続対策に着手する、あるいは、相続発生後に慌てて対処する、といった状況では、相続対策の選択肢も限定的となり、後悔することになりがちです。とくに承継する資産額が大きい富裕層の場合、一般的な家庭よりもさらに周到な準備が求められます。人生の早い段階から、ライフプランニングを踏まえたうえで長期的な計画を立てることが大切なのです。 相続税対策は、想定される納税額を確認し、その資金を準備することが必要です。それには、個人財産の全体像を把握しなければなりません。 同時にまた、現代は「人生100年時代」ともいわれ、老後資金への関心が高まっています。これに対応するには、死亡リスクだけでなく長寿リスクにも備えることが求められます。 そのため、ライフプランに基づいた資金計画を立てることが不可欠です。ライフプランの作成にはまず「ライフイベント表」「キャッシュフロー(CF)表」、そして「個人バランスシート」が活用されます。 ◆ライフイベント表 ライフイベント表は、人生の重要な出費である住宅購入、子どもの教育、老後の生活費を含む、予定されるイベントとそれに必要な資金を時系列で整理したものです。これを作ることによって、将来のお金の不安をなくすことができるでしょう。 ◆キャッシュフロー(CF)表 キャッシュフロー表は、現在の収支状況と将来のライフイベントに必要な資金を予測し、年ごとの収支と貯蓄残高を予測するツールです。収入には可処分所得を記入し、支出には、生活費、住居費、教育費などを記入します。収入から支出を差し引くと、貯蓄残高の増減額が算出されます。 これらのツールを用いることで、将来の収支を可視化し、必要な老後資金や予想される納税額を明確にすることができます。 ◆個人のバランスシート 個人の貸借対照表、バランスシートを作成します。個人のバランスシートでは、現時点での資産と負債の状況を示します。相続税は、資産から負債を差し引いた純資産にかかるものです。純資産が多いほど、将来の相続税負担も大きくなります。 個人のバランスシートでは、各資産を時価で示すべきですが、相続税の計算を行うため、「時価」を「相続税評価額」に置き換える必要があります。