富裕層の「相続税対策」…納税資金準備のために〈なるはや〉で作成・確認すべき「3つの表」とは?【相続専門税理士の助言】
納税資金準備の基本的なスキームと注意点
相続税の納税は、相続の開始を知った翌日から10ヵ月以内に現金一括で納付するのが原則です。納税資金を現金で準備できない場合は、相続財産を現金化して納税資金を作るか、延納や物納などの方法を利用します。 相続税の納税資金の過不足を把握するには、予測される相続税額と比較して、換金しやすい相続財産や相続人が持っている財産がどれだけあるかを評価します。この比率が100%未満の場合、納税資金が不足していると判断されます。 ◆相続税の納税資金に不足がある場合の対策 納税資金が不足している場合、生前対策を行っておくことが重要です。生命保険の活用が有効です。また、相続開始後に納税資金を作るには、不動産や金融資産の売却、代償分割などの方法があります。 まず、不動産や金融資産等の、保有資産を売却する場合の注意点を説明しましょう。 ◆生前に売却する場合の注意点、2つ 生前に売却する場合、流動性の高い金融資産が相続財産の大部分を占めることで、遺産分割協議がスムーズに進む可能性がありますが、次の2つの注意点があります。 (1)相続税評価のほうが市場価格よりも低くなるケースが多い 一般的に、相続税評価額は、実際の市場価格よりも低く設定されています。例えば、土地の評価に使われる路線価は、公示地価の約80%の水準で評価されます。それゆえ、売却して現金化せずに所有することで相続税負担が軽くなるはずです。 (2)取得費加算の特例が適用できなくなる 相続または遺贈によって取得した土地や建物、株式などを相続開始後3年以内に譲渡する場合、特例として相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することができます。生前に売却しますと、この特例を利用することができません。 ◆相続開始後に売却する場合の注意点、3つ 相続開始後に売却する場合、次の3つの注意点があります。 (1)急いで遺産分割協議を成立させる必要がある 不動産が共有状態で売却するには、全相続人の同意が必要だからです。 (2)土地に関わる小規模宅地等の特例が適用できなくなることがある 小規模宅地等の特例の適用条件の1つに、相続税の申告期限までを継続保有していることがあります。申告期限前に売却してしまうと、この特例を利用できなくなる可能性があります。 (3)売却プロセスが長くなっても売り急がないこと 不動産の売買には、相続登記、不動産仲介会社との契約、確定測量など多くの手続きが必要で、長期間を要します。しかし、納税資金の確保を焦り、安い価格で売却するのは避けるべきです。金融機関からの借入れや、延納、物納などの選択肢もあるため、慎重に検討しましょう。