新生活の悩みを相談するならどうすべき? 鴻上尚史が考える“相談するときの心構え”
4月から新年度が始まる。新しい環境へ一歩踏み出すことに期待を膨らませる一方で、不安を抱えている人も少なくないだろう。コラムの連載などを通じてさまざまな人の不安や悩みに答え、寄り添ってきた作家・演出家の鴻上尚史さんは、新生活を迎える人に対して「日本特有の『世間』というものに自分はどう向き合うのか、判断力を磨くべき」と語る。鴻上さんに自分の悩みを解決するための適切な相談の仕方や、新生活に向けて心がけておくべきことを聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「相談相手とはお土産を渡し合う関係であるべき」鴻上さんが考える相談の仕方とは
――鴻上さんはどのような相談に答えることが多いですか。 鴻上尚史: 理不尽な校則や教育に苦しんでいる人、“こうあるべき”という日本特有の同調圧力に苦しんでいる人からの相談に答えることが多いですね。 日本人は善かれ悪しかれ真面目な国民です。人の顔色をうかがって忖度するし、自ら同調圧力に飛び込んで行く人も多い。でも、辛いならそんなに頑張らなくて良いんです。誰かがそれを言ってあげなきゃいけないのですが、こういった悩みはうやむやにされてしまいがちです。だから、僕が率先して答えたいと思っています。 ただ、根本的な解決はなかなかできないので、具体的で実行しやすく問題の解決に有効なことを言うように心がけています。とにかく少しでも相談者が前進できる方法を言ってあげられたらと思っています。 ――鴻上さん自身が誰かに相談に乗ってもらった中で印象に残っていることはありますか。 鴻上尚史: 今でもすごく覚えているのですが、大学生の時、劇団を作るかどうしようか考えていて。当時、大学サークルからプロの劇団になるなんてなかったので、うまくいくかどうか、プロでやっていけるのかと思い巡らせていました。 ある時、先輩にその話を聞いてもらったら「それは考えているんじゃない、悩んでいるだけだ」と言われました。考えるというのは、「似たような劇団が他にあるのか、劇団が成功するにはどれだけ集客すればいいのか、そういったリサーチをすることを考えるっていうんだ。お前はうまくいくかどうかって悩んでいるだけじゃん」と。なるほど、その通りだ、と目から鱗が1000枚くらい落ちましたね。そのアドバイスはいまだにすごく感謝しています。 ――誰かに相談するとき、心がけておくべきことはありますか。 鴻上尚史: “お土産を渡し合う関係”って、僕は呼んでいるのですが、一方的にしゃべるだけ、一方的に聞くだけの関係では良くないと思っています。前回は僕が悩みをいっぱい言ったから、今回は聞いてあげる。この前はいっぱい聞いたから、今日は言わせてね、というお土産の渡し合いがないと、その関係は長続きしないと思いますね。 あと、悩みを相談するときは、相手のコンディションをちゃんと見たうえで、気取らずに、自分の気持ちを隠さずに全部話した方がいいです。もちろん不安や悲しみをそのまま吐き出して、自分だけすっきりして終わるのは相手に失礼です。話を聞いてくれる相手を心配しながらも、自分の抱えている恥ずかしいことをそのまま語るからこそ、自分の本当の悩みが伝わり、相手も親身に話を聞いてくれるのだと思います。