プラネタリウムでデートは日本だけ? 学習施設のその先にあるもの
かけがえのない生の時間に気づくこと
「『今のプラネタリウムはこうなってんだねえ』と驚かれると、得意な気持ちになります」と笑顔を見せるのは、同社の直営館を担当する直営グループの宇野喜徳担当課長。直営館を訪れる客は大半が大人、それもカップルと女性が大多数を占める。 こうした人々のニーズに応えようとした結果、エンターテインメント性の高い作品が増えた。娯楽一辺倒でプログラムを構成するわけではなく、あくまでも星や星座についての知識も取り入れつつ、エンターテインメント性を追求するという姿勢だ。プログラムの企画から制作、上映までにかける時間は約1年。 最初に「何を観客に伝えるか」を決める。その後、脚本作成を経て、CGなどプログラムに用いる素材を制作。出来上がった素材は、パソコンのプログラムによって、始まるタイミングや強弱などをすべて制御して上演する仕組みとなっている。 宇野担当課長は「もっとも大変なのは最後の詰め作業です。作る過程ではわからなくても、実際にドームに映すと見え方が狙いと異なる場合があるのです」と説明する。光の強弱やタイミングなどの調整を重ねて、ようやく日の目をみる。
プログラムの上映を、各種機器が支える。満天に導入されている同社の光学式プラネタリウム「インフィニウム シグマ」は、目視に近い天の川の明暗差や星のきらめきを再現する高性能機器。複数のプロジェクタを使ってつなぎ目のない映像を投影するシステムや、天井からの音が体験できる音響システムも備える。 新たな表現にも挑戦している。たとえば、「サカナクション」とのコラボレーション作品では、油がさまざまな模様を作り出すオイルアートの映像などを盛り込んだ。今後も新たな表現の可能性を追求する方針。宇野担当課長は、「自分たちにしかできないことを追求し、プラネタリウムを入口に新たな星のファンの獲得につなげたい」と話す。 スキマスイッチのプログラムに込められたメッセージは「宇宙の時間から見れば、われわれの生の時間はほんの一瞬ですが、だからこそ、そのかけがえのなさに気づいてほしい」だった。