箱根駅伝のサッポロビールCMはなぜ「エモい」のか、「売上が伸びるわけではない」けれど…応援し続ける理由
サッポロビールは、箱根駅伝を応援しています――。年始の風物詩となった東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で、テレビから流れるフレーズだ。サッポロビール(東京)が箱根駅伝に協賛を始めて第101回大会で39回目。今回の箱根駅伝CMの狙いを聞くと、ビール会社ならではの苦労も見えてきた。(デジタル編集部 古和康行) 第101回箱根駅伝エントリー選手一覧…1万mランキングもチェック
ネットでも話題になるテレビCM
箱根駅伝の時期、サッポロビールのテレビCMが話題に上る。インターネットのトレンド検索サービス「グーグルトレンド」を見ると、「箱根駅伝」という言葉と一緒によく検索されている。
サッポロビールの箱根駅伝のテレビCMはエモい。ランナーの箱根路にかける思いを描き、沿道で声援を送る人たちの情熱を映し、関わる全ての人にエールを送る。第100回大会のCMでは、過去大会に出場して名場面を作り出したOBのランナーに出演してもらい、次世代にたすきをつなぐような演出を見せた。駅伝経験者のみならずとも、胸が熱くなった人も少なくないだろう。
「多くの皆さんがテレビを通じて箱根駅伝を見る。テレビCMは非常に注力しているポイントです」
12月25日、東京・恵比寿のサッポロビール本社。CM作りについて、マーケティング本部・メディア統括グループリーダーの小池英樹さんはそう熱を込めつつ、こんなことを言った。「非常に難しいです」
その難しさとは何か。箱根駅伝で流れるサッポロビールのテレビCMには、商品や自社製品を飲むシーンが一切映らない。というよりも「映せない」のだ。
サッポロビールが所属する「ビール酒造組合」など9団体で構成する「飲酒に関する連絡協議会」は自主基準を定めている。この基準では、午前5時~午後6時までは「企業広告」(企業イメージ向上の目的)や「マナー広告」を除いて、酒類のテレビ広告は禁止されている。
翻って、箱根駅伝はどうか。レースが始まるのは往路も復路も午前8時にスタート。ゴールは、午後1時過ぎだ。「禁止時間」のど真ん中にレースが行われるため、箱根駅伝で流れるサッポロビールのCMは「企業広告」となり、商品のアピールポイントや発売時期などをテレビCMに盛り込むことが難しいのだ。