井上尚弥の衝撃2回TKO劇の全舞台裏…敗れたドネアは現役続行可能性を示唆?
「(井上のパンチは)効いていた。頭の中では、まだいけるだろうという感じだった。打たれたときに私は立ち上がり、止めるつもりはなかったが、レフェリーが試合を止めてくれたので良かった。ファイターは、どこで止めるべきか分からないもの。あのまま続行すれば、もっと痛んでいたのかもしれないからレフェリーに感謝したい。井上は信じられないほど素晴らしいファイターだった。私には素晴らしいゲームプランがあり、厳しいトレーニングを積み、とても自信があったが、序盤で、そのゲームプランを実行できなかった。井上という偉大なファイターとリングの時間を共有できて嬉しい」 ドネアは、ファンとのネット回線をつなぎ、質問を受けながら、こう語った。 注目の進退については「勝ってきた中で負けることは辛いことだが、それも人生の一部。またチームドネアでまとまり、大きな視野を持って見ていきたい」と語り、引退を示唆することはなかった。 大きな影響力を持つレイチェル夫人も「どのような決断を下すのかは彼次第。バトラーと戦いたいのか、階級を115ポンド(スーパーフライ級)に落とすのか。彼の考えをサポートしていくが、我々が気をつけるべきことは、彼が健康であるということ。子供のためにもね」と語り、むしろスーパーフライ級へ落すプランも含めて再起の可能性を示唆した。 さて気になるのが、モンスターの次戦だ。 4団体統一か、あるいは、「次なるステージ」スーパーバンタム級への転級か。井上は、その両方に可能性があることを示した上で、こう狙いを明かした。 「4団体統一はここまできた。リーチがかかった。まずはこの4団体統一を進めていきたい」 WBO世界同級王者のバトラーは、ドネアと同じく「プロべラム」がプロモートしている選手で、今回、リチャード・シェーファー社長が来日。すでに井上陣営との協議を行っている。大橋会長は、「相手があることなので」と慎重に言葉を選びながらも「(実現の)手応えは感じている」という。 前王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)が違反行為を犯したことで王座を剥奪され、新王者に認定されたバトラーは、元IBF王者で、スピードとキャリアを生かしたテクニックでポイントを稼ぐアウトボクサー。34勝(15KO)2敗の戦績で、一発の怖さはなく、井上を脅かすチャンピオンではないが、4団体統一王者は、世界でも過去に7人しかなく、バンタム級で達成した王者はいない。世界の歴史を塗り替える試合になるのだからモチベーションはキープされるだろう。 加えて水面下では、早くも、その試合の放映権の争奪戦が起きている。今回はAmazonプライムビデオが配信したが、これまで井上をスポンサードしてきた「ひかりTV」の親会社であるNTT本体が配信に興味を示している。 今回はトランクスの一番目立つところに「NTTドコモ」の広告が入った。井上の商品価値は急上昇している。リング誌が「バトラーと井上の対戦は日本、もしくは英国で行われたとしても大きなビジネスになるだろう」と報道するなど、4団体統一戦が実現すれば、世界が注目のさらなるビッグバウトとなることは間違いない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)