井上尚弥の衝撃2回TKO劇の全舞台裏…敗れたドネアは現役続行可能性を示唆?
その間、井上は一度としてぶれなかった。 第1戦が「ドラマ・イン・サイタマ」と称されたドネアとの再戦が決まると「ドラマにするつもりはない」と明言した。 なぜそこまで自らにプレッシャーをかけたのか。 「プレッシャーをかけることでトレーニングだったり、意気込みだったり、自らの向上心を上げたいと考えた。発言したからには到達するまでやらねばならない。自分に言い聞かせた」 自らを究極に高めるために逃げ場をなくした。 ドネアは、井上との試合以降、弟の拓真が勝てなかったWBC世界王者のノルディ・ウバーリ(フランス)を倒し、若きホープの暫定王者レイマート・ガバリョ(フィリピン)も衝撃のボディショットで沈めて、井上との再戦切符を勝ち取ってきた。 「ドネアは実力がある。2試合いい試合をしている。(ドラマに…)発言はしたものの不安な面もあった。そこに打ち勝った結果だけど、もの凄いプレッシャーがあった」 モンスターが心情を告白した。 相手が強くなれば強くなるほど井上は強くなる。第1戦では、2ラウンドに左フックを浴びて右目に眼窩底骨折を負い、以降、相手が二重に見える状況が続き、体重の乗ったパンチも打てず、モンスターの能力は半減されていた。 「たらればになるが、2年7か月前も、こういう展開をイメージしていた。でも、2ラウンドの左フックですべてのプランが崩れた」 燻っていた自負が、この日、間違っていなかったことを証明した。 「最高の結果に満足」「ホッとしている」という言葉もまた本音だろう。 井上は、自らのモチベーションを限界まで高めて、未知なる力を引き出してくれた好敵手のドネアへ敬意を表し、感謝の気持ちを伝えた。 「相手がドネアだからこそここまで燃えることができた。学生時代に憧れたチャンピオンであるからこそ、感動を呼べた。ドネアと戦えたことを誇りに思ってこの先へいきたい」 そのドネアは涙を浮かべながら花道を下がった。右目上をカット。控室でテーピングで応急措置をしたが、ダメージが大きく会見を拒否して会場を去った。 だが、ホテルの自室に戻ると、マネージャー兼トレーナーのレイチェル夫人や、スタッフに囲まれてジャージ姿のままソファに腰をかけるリラックスした様子で、時折、菓子を、ほおばりながら、サングラスで傷を隠してツイッターライブを約50分間も行った。