「S&P500」だけでは捉えきれない米国株式市場の転換、FTSE Russellの指数が示唆する変化
米国は9月17日-18日に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)において5.25%~5.50%という高い金利水準に据え置いてきた政策金利を引き下げるとみられている。この利下げ決定によって、米国のマーケット環境が大きく変わるとみられている。これまでは、高過ぎるといわれていた政策金利の水準にあってさえ、衰えなかった米国経済が減速してきたため、今後見通される金利の低下局面で活躍する銘柄群に活躍余地が広がると考えられている。米国の指数提供会社であるFTSE Russellは9月10日にオンラインセミナーを開催し、米国市場が2024年7月以降に大きな質的変化を起こしていることを明らかにした。「大型グロース優位の展開から、中小型バリューが活躍する市場に」というのが、足元の市場の動きから読み取れる傾向だという。
既に欧州中央銀行(ECB)は6月に続いて9月12日に0.25%の追加利下げを実施し、政策金利を3.50%にしている。米国の利下げ幅については0.25%、または、0.50%と見方が分かれているが、少なくとも年内に一段と政策金利の引き下げに動くという見方が有力だ。米国が欧州に比べて利下げのタイミングが遅いのは、米国経済が底堅く、利上げによって抑えているインフレ(物価上昇)が利下げによって再燃しかねないという恐れがあったためだ。インフレ率の水準は2022年にピークアウトし、昨年来の動きは「年2%程度」という目標水準に向けて落ち着いた動きになっている。
ところが、米国の期待成長率が高止まりし、期待インフレ率も2024年年初からはやや上向きの傾向を示す状態になり、米FRBは利下げ決定の決断を先送りすることになっていた。ただ、労働市場も失業率や賃金上昇率などが落ち着いた動きになってきたこともあって、いよいよ利下げへの政策転換を決定する動きになった。ここで重要なポイントは、今回の利下げが米国が不景気になって景気浮揚のために行う利下げではなく、米国経済が依然として好調な中で、「実体経済に対して過度に高い水準に維持してきた政策金利の水準を適正な水準に調整する」という目的による利下げだということだ。