「S&P500」だけでは捉えきれない米国株式市場の転換、FTSE Russellの指数が示唆する変化
4つの指数の組み入れ上位銘柄の顔ぶれだけみても、それぞれの指数の性格の違いは見て取れるが、過去の市場において、この4つの指標は特徴的な値動きをしてきた。たとえば、2024年1月~6月と7月~8月を比較すると、6月までは大型株「ラッセル1000」が優位だったものが、7月以降は中小型株「ラッセル2000」が優位な状態に逆転し、スタイル別でも6月までは「グロース」が優位だったが、7月以降は「バリュー」が優位になっている。日々ベースで4つの指数を追うと、7月11日までは大型成長株の「ラッセル1000グロース」が優位な展開だったが、7月16日以降は中小型割安株の「ラッセル2000バリュー」が優位に転換したという。
FTSE Russellによると、長期金利が上昇する局面では大型株の「ラッセル1000」指数が優位だが、長期金利の下降局面では中小型株「ラッセル2000」が優位になる傾向があるという。ところが、今年6月~7月は長期金利が低下する局面であったにもかかわらず大型株「ラッセル1000」が強い状態が継続していた。これは、金利状況よりもAI関連企業への成長期待が大きくエヌビディアなどの株価が上昇した影響が大きかった。その過去のトレンドからかい離した動きが7月中旬以降に一気に解消されて中小型割安株の「ラッセル2000バリュー」が優位になった。
今後、米国が利下げに動き、さらに、年内にも利下げが継続するような動きになるのであれば、中小型割安株の「ラッセル2000バリュー」が堅調に推移すると見通される。 また、FTSE Russellは指数の運用について、コーポレートアクション(配当や株式分割など)は日々の変化を取り入れ、IPO(新規上場)は四半期ごとに反映し、株式の流動性に問題のない場合は指数構成銘柄に採用するという方針をとっている。「1000」と「2000」、「グロース」と「バリュー」の見直しは毎年4月末のデータに基づいて見直し、6月に銘柄入れ替えを実施している。このIPOが2022年以降に金利引き上げや高止まりのため低調な状態が続いてきたが、米国に利下げ機運が高まるとともに、活発化する兆しがある。足元では「ラッセル2000」でIPO銘柄を指数に採用する動きが強まっている。IPOの活発化ということの面からも中小型株指数である「ラッセル2000」が注目されるタイミングになっている。