反ESG、脱化石燃料急かす「愚か者」が誘発-ヘッジファンド創業者
(ブルームバーグ): ウォール街で論争の的になっているESG(環境・社会・企業統治)投資に対して擁護派が最初からもう少し穏健な姿勢を示していれば、これほど窮地に陥ることはなかったかもしれない。ヘッジファンド業界のベテランでヘイマン・キャピタル・マネジメント創業者のカイル・バス氏が、こうした見方を示している。
バス氏は、ESG投資への反発がここ数年高まったのは主に、化石燃料から直ちに脱却するよう気候変動活動家が求めているためだと分析。これらの要求は批判に耐え得るものではないし、確たる判断に基づいたものでもないと指摘する。
同氏は「炭化水素関連企業を事業や資本受け入れから締め出せと言う愚か者ばかりだった」とインタビューで言及。「炭化水素関連の企業を排除するなら、われわれもあなた方とは取引しないとテキサス州から反撃された」と述べた。
ウォール街と気候変動対策を訴える活動家との間では、対立が深まっている。最近の事例としては、シティグループのマンハッタン本社前での数カ月にわたる抗議デモが挙げられる。
バス氏を含め、こうした気候変動活動家をナイーブだと評する金融専門家は増えている。KKRの共同創業者ヘンリー・クラビス氏や、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOも、同様の指摘をしている。
「エネルギー移行には40-50年かかる」とバス氏は指摘。「単に炭化水素をやめ、代替電力源に切り替えれば良いと思っている人もいるが、そうした人々は送電網の仕組みもビジネスの仕組みも知らない」と話す。
化石燃料と再エネの共存
今はエネルギー効率と電化に重点を置き、長期的には原子力への完全移行を目指すべきだとも指摘。それまでは、化石燃料と再生可能エネルギーが「今後何十年も共存していく」ことを受け入れる方が現実的だと語った。
当初ネット・ゼロ関連の団体に加盟したウォール街の企業の多くは、その後、化石燃料に敵対的と見られる企業を標的とする共和党が強い州での禁止措置を受ける立場となった。そうした企業は今は、石油やガスに関連する顧客を支持する姿勢を強めている。