考察『光る君へ』8話「一緒に行くか?」 「…行っちゃおうかな」遂に捕縛された直秀(毎熊克哉)の運命は?
忯子の霊が降りた?
義懐による陣定停止宣言。 それに異を唱える兼家……凛々たる声とその説得力に、この男が権力欲に取り憑かれた悪人というだけではない凄みを感じる。裏で策謀を巡らせてもそれは己のためではない、この国のためだと信じて疑わない男だ。 為時(岸谷五朗)のの言うとおり、いま政を動かすには義懐でも、関白・頼忠(橋爪淳)でも左大臣・雅信でも駄目なのだ。敵わない。 しかし、その右大臣・兼家が倒れた。 医師の診察後の指示がまず、魂が去らぬよう呼び返すこと。それだけ? と驚くが、これは「魂呼び」「魂呼ばい」と言って、明治時代の頃まで広く行われていた呪術である。呼び返す方法は様々で、枕元で名を呼ぶ、屋根の上で、あるいは井戸の底に向かって叫んだりしたという。医療が発達していない、そして土葬が中心だった時代は遺体を埋葬までしばらく置いて復活を祈る、「殯(もがり)」の期間が設けられた。その間に仮死状態であった人間が息を吹き返し、魂呼びの効果だと信じられた例もあったのではないだろうか。 寄坐(よりまし)に忯子(井上咲楽)の霊が降りた? しかし、彼女の腹の御子の呪詛を兼家と大臣たちから請け負ったのは安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)なのだ。寄坐と晴明が繋がっているとしたら。可能な現象、いや演出ではないか。
愛と憎しみを簡単に分離できない家族
右大臣家の子どもたちが、それぞれに父の枕元に侍る。 生き延びて道を示してくれと呼びかける道長。 道隆は心配そうに父を見守りながら、壺を磨く。第1話での父と嫡男ふたりの場面……「世の流れは己で作るのだ」「肚を据えよ。そなたは我が嫡男ぞ」と教えを説きながら壺を磨いていた父と同じ仕草だ。「魂呼び」に、この世に繋ぎ止めたい人の行動をなぞるというものがあるのだろうか。 父の手をそっと握る詮子(吉田羊)。父が嫌いですときっぱり言ってのける彼女だが、家族というものは愛と憎しみを簡単に分離できない、厄介な存在である。それを感じさせる姿だ。 そして、道兼(玉置玲央)。この場面で目を開け、笑みを浮かべる兼家に、道兼と一緒に驚き、テレビの前でギャッと叫んでしまった。ふと目を覚ましたのか、それとも道兼を待っていたのか。この時点では、まだわからない。
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