考察『光る君へ』8話「一緒に行くか?」 「…行っちゃおうかな」遂に捕縛された直秀(毎熊克哉)の運命は?
直秀「一緒に行くか?」
直秀の「そろそろ都から去るし」。 散楽が上演妨害の襲撃を受け、盗賊団も内裏に侵入したことで、ますます警戒が強まっているのだろう、やめ時なのだ。直秀が語る都の外の世界……丹後や播磨、筑紫。海には漁師が、山にはきこりが。まだ見ぬ地の話に胸ときめかせ、目を輝かせるまひろ。 播磨と筑紫は『源氏物語』に登場する。あの山を越えたところに広がる世界を、物語に描き込んだのかも、と想像してみる。 この場面の音楽が素晴らしい。青く輝く海原も、山風に揺れる梢も感じる。まひろとともに、まだ見ぬ世界に憧憬を覚える。 その音楽がふと止み、 「一緒に行くか?」 「……行っちゃおうかな」 笑って「行かねえよな」。 半分以上本気の誘いと、答え。そしてすぐに打ち消される本気。数秒の間がすごくいい。
義懐という存在
今週も関白と左右大臣に「義懐ごときが」と言われている、義懐(よしちか/高橋光臣)とは一体どういう人物か。 彼の父は右大臣兼家(段田安則)の長兄、かつて関白であった藤原伊尹(これただ)。つまり義懐は、兼家の甥にあたる。そして花山帝(本郷奏多)が「叔父上」と呼びかけているとおり、花山帝の母は義懐の同母姉だ。 父・伊尹と兄たちを亡くしたために一旦は出世レースから遠ざかったものの、藤原北家の嫡流で、父が関白だった義懐は兼家を脅かす存在なのだ。血筋の点からいえば「ごとき」では決してないが、この作品での彼は言動にその言葉を誘発するものがあるようだ。 そこに、花山帝寵臣としての爆速出世……並みいる公卿を、右大臣家嫡男・道隆(井浦新)さえをも追い抜いて。現関白と左右大臣が結託して危機感を抱くのも当然であった。 『鎌倉殿の13人』もそうだったが、大河ドラマの登場人物は血縁者同士で死闘を繰り広げがち……。
恋に落ちた倫子
左大臣家夫婦による、倫子(黒木華)の婿品定め。 先週、女性に対して言いたい放題だった公任(町田啓太)が穆子(むつこ/石野真子)に 「頭脳明晰でイケメンだけど、女泣かせで有名。倫子が同じように泣かされたら可哀想だ」という評価をくらう。 第7話で「大事なのは愛だの恋だのじゃない」と言い放った公任だったが、彼自身もこうした査定からは逃れられないということだろうか。 夫・雅信(益岡徹)の「赤染衛門がそう申しておった」に穆子の「あなた。衛門とふたりでお話なさったの? 何か……ホホホ。いや」。敏い穆子のやきもちと釘を刺す言葉が、怖カワイイ。石野真子がとてもキュートである。 道長の婿入り話に、まんざらでもない倫子……まんざらでもないどころか、頭からダイブする勢いで恋に落ちている。冒頭の姫君サロンで道長の名前が出たときの表情といい、黒木華の演技力が光った。 あと、メイクさんすごくないですか?恋をして上気した頬、艶やかなグラデーションの唇。再放送やNHKプラスでご覧になる方は、その美しさを確認してほしい。
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