「ヤミ金の帝王」摘発、五菱会事件 残滓今も 警視庁150年 116/150
自殺者が過去最多となった平成15年。バブル崩壊とその後の長引く不況下でヤミ金が跋扈(ばっこ)した。6月にはヤミ金業者の執拗(しつよう)な取り立てを苦に大阪府八尾市の夫婦ら3人が心中するなど、多重債務による自殺や失踪、厳しい取り立てによる夜逃げや一家離散などが社会問題となっていた。 暴力団の資金源にもなっていた「ヤミ金マネー」の根絶に向け、警視庁などは指定暴力団山口組系五菱(ごりょう)会(当時)の実質ナンバー2で「ヤミ金の帝王」と呼ばれた男らを逮捕した。五菱会は顧客情報や集金を管理する「センター」を設置し、その傘下に1千以上とされる業者を置いて多重債務者リストを基に悪質な取り立てを行っていた。 スイスの銀行に50億円超の犯罪収益が隠されていたことも発覚。東京地検が認定した被害総額は約161億円にも上った。15年中に全国で摘発されたヤミ金業者らは約1250人に上り、法改正による罰則の強化が進んだ。 大規模摘発から約20年。今年5月、警視庁はヤミ金を営んだ疑いで、かつて五菱会傘下にいた男を逮捕した。男は一度足を洗ったが、「あの味が忘れられない」とヤミ金へ出戻りした。五菱会の残滓(ざんし)は消えていない。 新たな手法を取り入れ形を変えながら営業を続けるヤミ金に、警察当局は目を光らせ続けている。(橋本愛)