海外メディアは東京五輪の1年延期合意をどう受け止めたか「なぜ今まで時間がかかった?」「まだ中止の可能性も」
東京五輪の開催を巡って安倍首相とIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長がテレビ電話による緊急会談を行い、「1年程度の延期をする。遅くとも来年の夏までに開催する」との内容で合意したニュースは世界中を駆け巡った。海外メディアは、トップ級の扱いで報道した。 英国のBBCは、五輪延期に関する東京五輪2020とIOCの主催者による共同声明などを記す記事の中で、「これは疑いなく、平時におけるスポーツでの最大の決定となった。五輪は長年にわたって、テロやボイコット、戦争やドーピング問題まで多くの困難に対処しなければならなかった。だが、今回のようなことはこれまでにはなかった。ただ、何週間も前に予測されていたことで、多くの人がなぜ今まで時間がかかったのかを問うだろう。アスリートが安全にトレーニングを行えないことに加え、渡航制限や封鎖の中で五輪やパラリンピックの予選大会の日程も縮小され、延期か中止が、唯一の実行可能な選択として浮かび上がっていた」と、延期決定の決断の遅れを指摘した。 また各選手たちの反応も紹介。 トライアスロンで2度の五輪王者になったアリスター・ブラウンリーの「IOCやその他の関係者にとって大変難しい決断だったことは明らかだが、自分の意見としては(延期は)正しいものだったと思う。ウイルスと戦う世界中の人々に送るメッセージ、準備を試みていたアスリートたちに与える明瞭さの両方で」というコメントや、パラリンピックで自転車と陸上王者のカディーナ・コックスの「正しい選択。なによりもまず健康。この厳しい時期を協力し合って、正しい時が来たら、五輪とそのレガシーを楽しむことができる」という声など、延期を歓迎する論調でまとめられている。 ESPNのオーストラリア版も、「東京五輪2020が、2021年まで正式に延期」との見出しを取った記事の中で、「五輪は戦争以外の理由で延期や中止をしたことはなく、新型コロナウイルスのようなことで、世界が停止する苦しみに直面することはほとんどなかった」と記し、「延期にもかかわらず、結局、いつ開催されるにせよ、この夏季五輪はオリンピック・パラリンピック大会東京2020と呼ばれることになる。五輪聖火も福島に保管され、展示される」と、東京五輪組織委員会の記者会見の内容を踏まえて報道された。 同メディアは、「この決定はIOCが五輪の延期検討について4週間の決定猶予を設けると述べてから48時間以内にもたらされた。新型コロナウイルス感染が、この数週間で広がり続ける中で、当初、バッハ会長や日本政府メンバーは五輪を予定通り開催可能と主張していた。日曜日の声明は延期が実際に起こりうると初めて公式に認めたものだった」と、その変節を皮肉をもって紹介した。 そして、48時間以内の決断に至った理由を、「この数日で各国やアスリートからのプレッシャーが高まりを見せ、カナダが延期しなければ五輪へ代表を送ることはしないと発表、オーストラリアもその決定に後で加わっていた。米国オリンピック・パラリンピック委員会は週末に4000人以上の米国五輪候補選手に対して調査を行い、7割近くが、”7月に開催されれば五輪はフェアなものになるとは思えない”と返答していた。ドイツとポーランドもまた五輪の延期を要求していた」と”外圧”によるものだったと分析した。